「諸星大二郎自選短編集」

 「諸星大二郎自選短編集 汝、神になれ鬼になれ」(集英社文庫)読了。古来、日本語では神仏、妖怪、怨霊など、恐怖・畏怖の対象を"モノ"と言い表していたそうです。(物の怪、物忌み…) そのモノについて語る、あるいはモノに憑かれて語る、これが「物語」という言葉の語源ではないかと愚考します。そうした得体の知れない、われわれが恐れる/畏れるモノを描かせ、語らせたら天下無双の漫画家・諸星大二郎氏の傑作短編集、これは読まない手はありませぬ。神話や民俗学の該博な知識を駆使して、われわれのまわりに潜むモノたちを濃厚なタッチと描線で描き出してくれます。もう一人のキリスト、人身御供、生首、海竜、禍つ神、胎児たちが跳梁跋扈するモロホシ・ワールドへようこそ! 「生命の木」「六福神」「鎮守の森」「復讐クラブ」「海竜祭の夜」「毛家の怪」「生首事件」「闇の客人(まろうど)」「沼の子供」「子供の遊び」「逆立猿人」「夢みる機械」を収録していますが、私のお気に入りは「生命の木」です。「おらといっしょにぱらいそさいくだ!!」という科白と、その後に続く空前絶後の壮大・壮絶なシーンは絶対に忘れないでしょう。
 えっ、「生物都市」がないじゃないかとおっしゃりますか? 大丈夫、「自選短編集 彼方より」の方に収められています。
by sabasaba13 | 2008-11-14 06:29 | | Comments(0)
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