「明日の神話」

 「アーツ&クラフツ展」の余韻もさめやらぬ卯月下旬、そういえば民藝運動の主導者・柳宗悦が開設した日本民藝館に行ったことがないなあとはたと気がつき、思い立ったが吉日、さっそく訪れることにしました。インターネットで調べたところ、JR渋谷駅から京王井の頭線に乗って二つ目の東大駒場駅の近くだと判明。ん、渋谷? そういえば岡本太郎の畢生の大作『明日の神話』が展示されているではないかとはたはたと気づき、一石二鳥、濡れ手に粟、蜜柑金柑酒の燗嫁をもたせにゃ働かん、途中で寄って拝見することにしました。
 渋谷駅の二階から京王井の頭線に向かう連絡通路に、この巨大な壁画(縦5.5メートル×横30メートル)は展示されていました。「明日の神話 再生プロジェクト オフィシャルページ」によると、メキシコの実業家から新築ホテルのロビーを飾る壁画として依頼を受け、『太陽の塔』の制作と同時期の1968年から1969年に描かれました。その後、ホテルは未完成のまま放置されることになり、『明日の神話』も行方不明になってしまいました。2003年9月に、メキシコシティ郊外の資材置き場で発見され、岡本敏子氏(岡本太郎記念館館長)を中心に再生プロジェクトが立ち上げられ、修復の上、いくつかの候補地の中からここ渋谷が選ばれました。先日放映された「美の巨人たち」(テレビ東京)では、テーマは第五福竜丸事件、そしてパリ万国博覧会で見て衝撃を受けたピカソの『ゲルニカ』を乗り越えようとしていたのではないか、と指摘していました。
さてそれでは脇目もふらずに流れ行く人の波に抗いながら、じっくりと拝見しましょう。
c0051620_675489.jpg

 まずは神々が宿る細部から。中央にははじけるような骸骨(ベ平連のために彼が書いた「殺すな」という書の「殺」という字に似ているような気がします)、そして第五福竜丸らしき船、きのこ雲、業火に焼かれる人間たち、怪鳥(?)といったモチーフが巨大な画面のあちらこちらにちりばめられています。そして後ろに下がって全体を見渡しましょう。骸骨という中心から流れ出すようにのたうちまわる様々な原色のフォルム、その禍々しさは圧倒的です。核兵器に対する作者の怒りがびしびしと伝わってきますが、どうもそれだけではないような気もします。まあ、今、ここで、すべてを感得しなくてもいいでしょう。長い時間をかけて見つめ考えながらつきあっていく価値のある壁画だと直観しました。ただ鑑賞という点からみて、ここ渋谷を選んだのには大きな疑問を感じます。連絡通路という狭い空間のため全体を十分に見渡すことができず、おまけに中央付近には画面を無残に切り裂く柱が立っていました。私だったら、広大なスペースがあり、しかも核の恐怖に最も脅かされている地を選びます。そう、六ヶ所村です。

 本日の一枚です。
c0051620_682314.jpg

by sabasaba13 | 2009-05-08 06:09 | 美術 | Comments(0)
<< 日本民藝館 アーツ&クラフツ展 >>