紀伊編(1):前口上(08.9)

 昨年の9月下旬、代休をからめて三連休にすることができました。となると「片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやま」ず、「そヾろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取もの手につか」ない私としてはいてもたってもいられない。さて今度はどこへ行こうかなっ、まずは己の内なる声に耳を傾けましょう。すると、ゆ、あ、さ…という爛れた幽かな囁きが心の暗部から聴こえてきます。湯浅か… 実はわが敬愛する散歩の奇人・グレゴリ青山氏が「グ印関西めぐり 濃口」(メディア・ファクトリー)の中で、思わぬ発見をした時のオーラを発し喘ぎながら絶賛されていた町です。これで幹は決まったので、枝葉をつけていきましょう。いつものように「小さな町小さな旅 関西周辺」(山と渓谷社)、「歩く地図 南紀・伊勢・志摩」(山と渓谷社)、「近代化遺産を歩く」(増田彰久 中公新書1604)、「保存版ガイド 日本の戦争遺跡」(戦争遺跡保存全国ネットワーク編著 平凡社新書240)、「日本の棚田百選」(農村環境整備センター)、「日本の灯台50選」(燈光会)といった愉快な仲間たちの助力を得たところ、わんさかわんさわんさかわんさいえーいいえーいいえい、と面白そうな物件が見つかりました。風情のある街並みとして富田林・貝塚・信達・御坊・黒江、日の岬灯台と友ヶ島灯台、友ヶ島の戦争遺跡、下赤坂の棚田、浜寺公園駅・淡輪駅の古い駅舎、史跡としては道明寺・根来寺・粉河寺、どうでいもってけどろぼう! これだけ揃えば文句はありません、後はこうした地をどうつなげるかがプランニングの醍醐味です。今回気をつけなければいけないのは棚田へのバスと友ヶ島への船の発着時刻、それ以外は列車による移動が中心でローカル線でも一時間に一本は便がありそうなので分刻みの旅程をたてる必要はないでしょう。各訪問先のハブに位置する和歌山市に二泊、新幹線より安い飛行機を利用して、往きは大阪伊丹着、帰りは関西空港発と決定、さっそく予約をしました。第一日目:伊丹→富田林→下赤坂の棚田→浜寺公園駅→貝塚→信達→淡輪駅→和歌山、第二日目:和歌山→日の岬→御坊→道明寺→湯浅→黒江→和歌山、第三日目:和歌山→加太→友ヶ島→根来寺→粉河寺→関西空港、といったところかな。うわあ、きっつきつやなあ、と思わず関西弁で呻いてしまいましたが、若気の至り(どこがだ)ということで強行しちゃいましょう。そうそう、御当地のB級グルメを味わうために「るるぶ」("たべる・ふとる・でぶ"の略でしたっけ?)(JTBパブリッシング)も忘れずに。メタボリック症候群なんざ○○くらえ、という意気込みで食べまくりたいと思います。持参した本は「裸者と死者(上)」(ノーマン・メイラー 新潮文庫)です。

 9月好日、天気予報によると大阪周辺は激しい雨→曇。まいったなあ、ざんざ降りの中で棚田を歩き回るのはきついなあ。とりあえず伊丹空港に着いた時点で、決定しましょう。雨が上がりそうになかったら、富田林と棚田は三日目にまわして、長駆、湯浅に行ってしまいましょう。羽田を飛び立ち大阪伊丹空港に着きましたが、予報どおり激しい雨が降っています。まいったなあ、とりあえずバスで天王寺・あべの橋まで行って、そこで判断することにしました。ここでしたら十分にリカバリーが可能です。驟雨の中、高速道路を疾走するバス、その車窓から見えたビルボードにはまるで人の不運を笑うかのような「♪おーいオカムラくん♪ オフィス家具オカムラ」という、膝が脱臼するようなしょーもないギャグ。これで頭の中は一気に関西モードにシフトチェンジしてしまいました。さてあべの橋に到着すると、雨は小降りになっており、雲の切れ間も見えています。これなら何とかなりそう、予定通りの行程でいきましょう。
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by sabasaba13 | 2009-06-30 06:13 | 近畿 | Comments(0)
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