紀伊編(12):御坊(08.9)

 さてそろそろバスの出発する時間です、停留所に戻りましょう。さきほど乗ったバスがずっと待機しており、運転手さんがのんびりと紫煙をくゆらしていました。挨拶をして乗り込み、左側最前部の座席を陣取り、さあ出発。運転手さんと四方山話をしながら(していいのか)駅へと向かいます。そして紀州鉄道の古い車両に乗り込みました。ガイドブックによると、日本一短いローカル私鉄で、鉄ちゃんにはお馴染みの路線だそうです。御坊~西御坊間の約2.7キロを八分でつないでいます。この古い車両は知る人ぞ知る知らない人は知らないキハ600という、その筋では有名なものだそうです。板張りの床とニスの匂い、古風な座席、武骨だがどこか愛嬌のある外観、もう昭和三十年代にタイムスリップしてしまった気分です。車内をきょろきょろ物色していると「新潟鐵工 昭和35年」というプレートがありました。ってことは、つまり、その、なんだ、私と同い年だ! 生まれてすぐ和歌山の正一おじさん(仮名)にひきとられて離れ離れになった双子の兄と、偶然神保町の東京堂書店で再会を果たした気持ちです。おにいちゃん!
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 なんて冗談をかましているうちに、列車は日高高校の最寄り駅「学門」に到着。こちらの切符は受験生に人気があるそうです。そして紀伊御坊(有人駅)、市役所前と、列車は民家の隙間を縫うようにのてのてと走り、終点・西御坊駅に到着です。観光案内所があるわきゃないと覚悟していたので、駅舎に「紀州・ごぼう寺内町散策マップ -大正のロマンが息づく町並み-」という掲示物があったのには助かりました。さっそく撮影し、これからぶらつくところの当たりをつけました。それにしても、ここは駅舎というよりも夜逃げ直後の民家ですね。だだっぴろい広間(待合室)があるだけで、入口には「西御坊駅」という看板すらありません。その素っ気なさというか恬淡さには舌を巻きます。そして壁には「テロ対策実施中」というお決まりのポスター。いったい、誰が、何のために、紀州鉄道西御坊駅でテロをするというのだ!
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 まずは駅周辺を散策してみましょう。「清床」という店仕舞いした床屋、蒸気機関車が描かれている年代物の「踏切注意」標識、玄関の前に鳥居がしつらえてある民家、うん、ちょっと胸がときめいてきたぞ。
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 そして「松原通り商店街」と描かれたアーチをくぐって商店街を抜け、寺内町の中核・本願寺日高別院を表敬訪問することにしましょう。ぽつんぽつんと雨だれのように商店が点在し、シャッターを閉ざした店も見かける商店街なのですが、磊落はしているけれど不思議と貧しいという印象は受けません。なぜなのだろう? 右手の塀越しに、野口雨情と親交のあった山本好一邸が見えますが、なかなか洒落た洋館です。やがて通りの正面に日高別院の大きな瓦屋根が見えてきました。門前にあった「飛び出し娘」のちょっとメランコリックな表情が印象的です。
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 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2009-07-15 19:23 | 近畿 | Comments(0)
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