「子規365日」

 「子規365日」(夏井いつき 朝日新書127)読了。以前に「仰臥漫録」の書評を掲載しましたが、正岡子規の短歌・俳句に本気で向かい合ってみたいものだと思っていました。そして出逢ったのが本書。俳人の夏井氏が、二万四千もの子規の俳句の中から、一日一句365句を選び、簡にして要を得た解説をくわえられています。肩をいからせず、リラックスした気持ちで読み進められるのがいいですね。子規と聞くと、ついつい写実に徹した求道者のようなイメージをもってしまいますが、本書のおかげでゆるゆるとした楽しい句、何気ない日常をさらりと小粋に詠んだ句に数多くふれられたことは幸甚です。あらためて、自分をとりまく自然、人間、そして世界を十七文字・三十一文字で写し取ることに喜びと生甲斐を感じていたのだなあ、と痛感。特に気に入った句を紹介します。
ここらにも人住みけるよ冬の山
蒲公英やローンテニスの線の外
故郷やどちらを見ても山笑ふ
花十日五日は雨にふられけり
おとつさんこんなに花がちつてるよ
田から田へうれしさうなる水の音
 いいなあ。俳人の末席をけがしているかもしれないと自惚れながらも、最近全然句を詠んでいない小生、また俄然と創作に挑みたくなりました。いやいや力んではいけませんね、まずは身のまわりの光景を見つめ、音に耳をすまし、空気を感じることからはじめましょう。
 また俳句に関する夏井氏のさまざまなコメントも楽しめかつ勉強になりました。例えば、五・七か、七・五の一二音フレーズを作り、そのフレーズに似合った五音の季語を探すという「取り合わせ」という手法。一二音フレーズと季語は、意味の上で関係性を持たせないことが大切なコツだそうです。(p.69) なるほどねえ、これはすぐに使えそう。また、今のような冷房設備などなかった時代、夏の暑さをどう凌ぐかは生活における大問題であり、「簾」「網戸」「打水」「団扇」「籠枕」「風鈴」などは、湿気の多い列島に暮らす日本人の工夫から生まれた季語なのだ、という指摘も納得です。(p.139) 歳時記も、夏の部分が最も分厚いのですね。夏の暑さと湿気から日本文化を読み解けるかもしれません。
by sabasaba13 | 2009-08-26 06:22 | | Comments(0)
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