第五福竜丸展示館編(2):(09.8)

 さてこの事件から、われわれは何を学び考えるべきでしょうか。もちろん、核兵器と放射能の恐ろしさです。ただ、「この事件は広島、長崎につぐ第三の被曝で、これを最後にすべきだ」という認識はやめましょう。言うまでもないこと(だと信じたいの)ですが、放射能による被害は世界中のいたるところで起きましたし、起きています。マーシャル諸島の人々をはじめ核実験場周辺に住む人々や実験の関係者、ウラン鉱山で働く労働者、核兵器製造工場周辺の住民、劣化ウラン弾の残骸とともに暮らす人々、核(原子力)発電所の事故で被災した人々… そして絶対に忘れてはいけないのが内部被曝です。微量の放射線を出す放射性物質が体内にとりこまれ体内の組織に沈着し、アルファ線、ベータ線などを長時間放射しつづけた結果、体細胞が傷つけられて慢性の疾病をゆっくりと進行させ、また生殖細胞が傷つけられて子孫に遺伝障害を残すということですね。私たちは、大量の放射能を浴びなければ大丈夫だと、ついつい安易に考えがちですが、微量の放射能がもつ危険性にも注意を向けるべきです。よって核(原子力)発電所や再処理工場から日々輩出される放射性物質による周辺住民の被曝についても考えるべきだし、さらにこうした放射性物質は風や水とともに世界中に拡散していきます。宇宙船地球号という物言いがありますが、宇宙船第五福竜丸と言った方がいいのかもしれません。よって地球規模に拡大している放射能汚染への警鐘となるシンボリックな事件と捉えたいと思います。
 さてそれではオバマ大統領は、本気で核兵器廃絶に取り組むのでしょうか。「狂気の核武装大国アメリカ」(集英社新書0450A)の中で、ヘレン・カルディコット氏は、アメリカがこれまで狂気の如く核兵器開発を含む軍備拡大に邁進してきた理由を次のようにまとめられています。
「それはアメリカ軍を構成する空軍、陸軍、海軍、海兵隊の間の競争意識の結果だ。それぞれが自前の兵器システムをほしがっている」「それは、兵器購入の法律を作るたびに兵器製造業者から多額の寄付を受け取る、連邦議会とホワイトハウスの法律制定者たちの威信を高める」「通常兵器と核兵器を入れた巨大な兵器庫のおかげで、アメリカは罪に問われることなく、世界中でやりたいことができる。それはグローバルに展開するアメリカ企業のビロードの手袋の下にちらつく鉄拳なのだ」(p.22)
 ということは、アメリカ軍首脳の兵器に対する意識を根柢から変え、兵器製造業者と議会・ホワイトハウスの癒着を断ち、アメリカ企業の放恣な経済活動に抑制を加えなければなりません。ま、オバマ氏は演説の中では、そこまで踏み込んだ発言はしていないのが気がかりですが、おおいに期待したいと思います。ただ見逃せないのが、「私たちは、気候変動と戦い、すべての人々にとって平和の機会を推進するために、原子力エネルギーを利用しなければなりません」という部分です。安全性という面からもコスト面からも、核(原子力)発電も廃絶すべきたと思いますが、これに関しては積極的に推進しようという立場のようです。もしかすると核兵器製造業者が、経営の方針を核兵器から核(原子力)発電へと大きくシフトしようとしている動きがあるのかもしれません。いずれにせよオバマ大統領には、故ドワイト・アイゼンハワー大統領の言葉を肝に銘じてほしいと思います。「銃が作られ、軍艦が進水し、ロケット砲が発射されることは、食べ物や衣服さえなく、寒さに震える人々に対する究極の窃盗を意味する」

 さてそろそろ帰りましょう。外へ出ると、地を焦がすような炎熱の中、第五福竜丸のエンジンの野外展示とまぐろ塚がありました。そう、放射能汚染のため廃棄されたマグロたちを悼む碑ですね。かつて築地にあったものがここに移転されたそうで、築地にはそのかわりにプレートがあるそうです。そして「原水爆の被害者はわたしを最後にしてほしい」という久保山愛吉さんの言葉を刻んだ碑が、無言で佇んでいました。
c0051620_6193375.jpg

 関連する書評を掲載しておきます。
核大国化する日本 平和利用と核武装論」(鈴木真奈美 平凡社新書336)
内部被曝の脅威 -原爆から劣化ウラン弾まで」(肥田舜太郎/鎌仲ひとみ ちくま新書541)
ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸」(絵ベン・シャーン 構成・文アーサー・ビナード 集英社)

 本日の三枚です。
c0051620_620011.jpg

c0051620_6201527.jpg

c0051620_6203286.jpg

by sabasaba13 | 2009-08-28 06:21 | 東京 | Comments(2)
Commented by mesato52 at 2014-07-22 18:37 x
当たり前と言えば当たり前なのかも知れませんが、木製なんですね
板子1枚・・・実感です
まぁソ連に占領されるよりズッとマシだったんですが、タラレバがあれば、2期目の副大統領がウォレスのままだったら、広島・長崎は無かったのではと思っています
関連して、便所のない家を何故建てたり、使用再開するのだろうと、ホントに憂鬱です。
Commented by sabasaba13 at 2014-07-27 19:40
 こんばんは、mesato52さん。見学後、この核実験で被曝した船や人びとが膨大な数にのぼることを、『核の海の証言』http://sabasaba13.exblog.jp/18625829を読んで知りました。
 「便所のない家」にしたがる安倍伍長をはじめ政治家・官僚・財界のみなさまは、便所があふれたらすぐに逃げ出せるセカンド・ハウスをたくさんもっているのでしょうね。
<< 照葉峡編(1):(08.10) 第五福竜丸展示館編(1):(0... >>