そして自動車を返却して、土浦の市街地を散策しました。夕食はうなぎしかないと腹を決めていたのですが、お目当ての店は残念ながら予約で満杯。やむをえず、旧水戸街道ぞいにある老舗の蕎麦屋「吾妻庵本店」でてんざるを食しました。蕎麦と天麩羅の旨さもさることながら、創業百年という店のたたずまいには脱帽いたしました。格子戸をあけて中に入ると、土間と座敷、さらに奥には瀟洒な中庭があります。涼風が風鈴を鳴らしながら吹き抜け、ふと見上げると時代を感じさせる蒸篭や神棚が長押に並んでいます。ひさびさに真っ当な(死語)、御天道様に恥ずかしくない(死語)蕎麦屋に出会えて、盆と正月がいっぺんにきたような嬉しさでしたね。土浦の街並みはkitschかつ胡散臭い雰囲気で、私好みです。しぶい茶道具の店が商店街のど真ん中にあるかと思えば、地上げにあったらしい空き地、大谷石づくりの見事な蔵があるかと思えば発酵しかかっているような鬘屋、「霞ヶ浦自衛隊友の店・茨城県警察官友の会会員」キャーット(旧黒猫)といった摩訶不思議な店が路傍で微笑んでいます。迷宮をさまよい歩いていると、一件の家がチェシャ猫のようにニッと笑い薄暮の中に消えていきました。恐るべし土浦。さあ異界への扉を開けてみませんか。そう、そこは茨城…