土佐・阿波編(12):高知(09.3)

 高知駅には18:09に到着、まだ落日まで間がありそうなので、前倒しで中江兆民誕生の地まで行ってみましょう。なお昨晩、観光案内所でもらった「高知市中心部マップ」がなかなかの優れもので、名所・旧跡に加えて歴史上の人物に関する記念碑なども網羅されています。こやつを頼りに、高知橋を渡り、江の口川ぞいに東行して高知八幡宮を過ぎたあたりに碑がありました。碑文を紹介します。
中江兆民(1847~1901)
自由民権の思想家。フランス留学から帰国後「民約訳解」によってルソーの思想を紹介し、また「東洋自由新聞」「政理叢談」等に自由民権論を発表した。第1回衆議院議員に当選したが民党一部の行動に憤慨して辞職。「三酔人経綸問答」「一年有半」等の著作がある。
 以前にも紹介しましたが彼の寸鉄のような言葉が忘れられません。
 我邦人は利害に明にして理義に暗し、事に従ふことを好みて考ふることを好まず、夫れ唯考ふることを好まず、故に天下の最明白なる道理にして、之を放過して會て怪まず、永年封建制度を甘受し士人の跋扈に任じて、所謂切棄御免の暴に遭ふも會て抗争することを為さざりし所以の者、正に其考ふること無きに坐するのみ、夫れ唯考ふることを好まず、故に凡そ其為す所浅薄にして、十二分の処所に透徹すること能はず、今後に要する所は、豪傑的偉人よりも哲学的偉人を得るに在り。(「一年有半」より)
 服従することを好み、考えることを嫌う国民。兆民先生、恥ずかしながら百年以上たった今でお全く変わっておりません。近頃では「パンは必要ない、サーカス(オリンピック)だけ与えておけ」と某都知事になめられている体たらくです。先生も、草葉の陰で"唯苦笑する耳"でしょう。あるいは"無血虫の陳列場"と罵倒してくれるかな。
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 さてそれでは土佐料理「司」に行って雪辱戦、焼きさばの棒寿司をいただくことにしましょう。三連休の初日だけあって、店の入口には行列ができています。念のため確認すると、一人だったら席があるとのこと、やりい。カウンター席に坐わると昨晩と同じ仲居さんがやってきました。さっそく「焼きさば棒寿司とゴリの煮付けっ!」と赤胴鈴ノ助のように元気いっぱい注文すると… 「まことに申し訳ありませんが」「えっ」「今たてこんでおりまして」「……」「大変時間がかかります」「どれくらいですか」「一時間ほど」「………」 “Vissi da saba, vissi d'amore”という「トスカ」の一節が左の内耳に、「たかが鯖じゃないか」というヒッチコック監督の声が右の内耳に響き合います。どうしよう、としばし途方に暮れてしまいました。すると私の哀愁をおびた悲しげな表情に同情したのか、はたまたここで首をくくられては困ると不安になったのか、「少々お待ち下さい」と言い残して去っていきました。すぐに戻ってきて「二十分ほどでできます」とのお答え。やりいやりい、待ちましょう待ちましょう。そして二十分後にしずしずと登場、美味しそうな焼きかげんと嗅覚をくすぐる芳香、その神々しいお姿に三跪九拝したくなりました。味? もう言葉にできません、「旨い旨い」と味蕾は大騒ぎをしてしまいましたが。そして近くの土産屋で純米酒「酔鯨」を購入。ホテルにチェックインをして部屋でシャワーを浴び、鯨飲。山内豊信(容堂)の雅号「鯨海酔候」からつけた名前なのでしょうね。そういえば柳ジョージ&レイニーウッドに「酔って候」という曲があったっけ、なかなか渋くていい楽団だったけれど今どうしているのかなあ、などと考えてうつらうつらしているうちに爆睡…
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2010-01-08 06:10 | 四国 | Comments(0)
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