下館・益子編(11):久保講堂(09.8)

 久保講堂移築記念碑によると、1938年、久保六平氏が傘寿を記念して、巨費を投じて真岡尋常高等小学校に建設・寄贈したものだそうです。その後、体育館新築のために取り壊されそうになりましたが、多くの市民の要望によってここに移築保存されたとのことです。いい話だなあ、立派な見識だなあ、帝国ホテル関係者に爪の垢を飲ませてあげたいなあ。残念ながら鍵がかかっていて中に入れないので、外観をじっくりと堪能いたしましょう。切妻屋根の和風建築と、細長いキューブ状の建築を組み合わせた独特のスタイルです。屹立する二本の塔がアクセントとなって、全体の景観をきりりと引き締めています。講堂部側壁のすこし奥まったところにリボン・ウィンドウがとりつけられ、その前に並ぶ二本の柱と雨樋が軽快な躍動感をつくりだしています。この奥まった部分で陽光がつくりだす光と影の対比がなんとも目に心地よく映ります。黄土色の漆喰が、全体的に温もりのある雰囲気をかもしだしています。そして裏にまわると純和風建築ですが、廊下部分なのでしょうか、壁面ほとんどをガラス窓が埋めつくし、正面中央の巨大な窓も印象的。きっと中では、光に満ち溢れた空間が演出されているのでしょうね。ああええもんみせてもろた。こういう、品のある、落ち着いた、素敵な建物がもっともっと増えれば街の景観も一変するでしょうね。と同時に、そうした素敵な建物と有機的につながる自然環境も重要だと考えます。この島の風土においては、木と水ではないかな。古木や巨木、森や雑木林、川や運河や池、そうしたものを消滅させてしまえば、そこから生えて根づいて生きているような建築をつくりだそうとする建築家のアイデアも窒息してしまうでしょう。
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 後日談。帰宅して数日後、テレビ東京の「美の巨人たち」が遠藤新をとりあげていました。帝国ホテルを完成させた実績を買われた遠藤は、その後旧甲子園ホテルの設計者に選ばれました。日本初の高級リゾートホテルとして1930年に開業したこのホテルはたちまち評判となり、帝国ホテルと並び称されるようになったそうです。しかし戦争などの理由により、わずか十四年で廃業、しかし幸いなるかな、現在は、武庫川女子大学建築学科のキャンパスとして使われており、事前に申し込めば見学も可能のようです。テレビで見た限り、周囲の景観とマッチした素晴らしい建物ですね。芦屋にある山邑邸とともに、いつか必ず見てやるぞ、と♪俺の闘志は火と燃える♪のでありました。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2010-04-28 06:25 | 関東 | Comments(0)
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