南東北錦秋編(9):山形十日町(09.10)

 それでは怪しい夜の徘徊をもうすこし続けましょう。次なるは旧市島銃砲火薬店、ギリシャ神殿風の外観がユニークです。竣工は1926(昭和元)年、山形県でも最も早い時期に建てられた鉄筋コンクリート造の建築だそうです。その近くには「山形名産 焼ふ」という看板、浅尾製ふ(麩)所が元気に商いをされていました。
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 十日町方面へと路地裏を歩いていくと、イトウ製靴店を発見、靴をつくっていらっしゃる職人さんですね。硝子窓から中を見るとさまざまな道具が置かれており、職人の息遣いが伝わってきます。
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 そして旧西村写真館に到着。1921(大正10)年に当主自らが設計施工した洋風建築だそうです。正面二階のアーチといい、細部や窓の桟といい、素人が建てたとは思えないほんとうに洒落た洋館です。古い写真館には逸品が多いのですが、こちらは群を抜いた優品です。そして十日町界隈に出ると、古い門の奥に、古風な洋館が夜の闇の中に佇んでいました。おっここにも教会が…と思ったら、なんと「吉池小児科医院」でした。残念ながら門は閉ざされており接近できなかったため、細部を見ることはできなかったのですが堂々とした洋館であることはわかります。しかし、実は、堂々というよりも、不気味… これじゃあ連れてこられた子どもたちは恐怖のあまり泣き出してしまうのではないか、と余計なお世話的心配をしてしまいます。映画「サイコ」に登場するベイツ・モーテルの裏にあった洋館みたいな感じです。なお余談ですが、マリオン・クレイン(ジャネット・リー)が乗っていた55年型フォードのナンバーは「ANL709」、彼女が殺された日は1959年12月12日(土)、ベイツ・モーテルの一号室でした。以上、「スーパートリビア事典」(研究社)による情報です。さきほどインターネットで調べた結果、この建物も中條精一郎の作品であることがわかりました(竣工は1912年)。丸太中村近江屋は見事な店蔵ですね。寝装野村屋も店蔵ですが、ちょこんと乗っかった塔屋がチャーミングです。マルタニは、組み合わされた切妻屋根と入母屋屋根と海鼠壁が見事な店蔵です。
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 というわけで、いやあこれだけの物件がそろっているとは、山形恐るべしですね。観光協会作成の「こだわり探検コース」によると、他にも、明治末の建築と伝えられる山形聖ペテロ教会、県下初の鉄筋コンクリート造の山形市立第一小学校旧校舎、旧山形師範学校本館(教育資料館)と旧山形師範学校講堂(山形県立山形北高等学校)、外観洋風・内部和風の老舗料亭・千歳館、1925(大正14)年竣工の七日町二郵便局など、垂涎の物件がテンコ盛りです。これまで拙ブログで「再訪を期す」とたびたび記してきましたが、社交辞令的なところも多々ありました。しかし、こと山形市に関しては衷心より再訪を期したいと思います。土門拳記念館とそこにあるイサム・ノグチの彫刻を拝見して、酒田散策をからめると面白そうだなあ。でも何か忘れたような… あっ、伊東忠太設計の明善寺に寄るのを忘れた! ま、いいやその時に訪れることにしましょう。駅前の酒屋で「初孫 魔斬」を購入、山形駅の中央通路を抜けてホテルに帰参。明日は朝早く起きなければならないので、部屋で一献傾け、早々に寝ることにしました。
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 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2010-09-30 05:02 | 東北 | Comments(0)
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