サドルにまたがり、平泉文化遺産センターの前を走りぬけ、十分ほどで毛越寺(もうつうじ)に到着です。奥州藤原氏二代基衡の建立で堂宇伽藍は焼失しましたが、浄土庭園はほぼ完全な形で発見され、往時のままに復元されています。さっそくそちらへ行ってみましょう。周囲の山々や木立を映す宏大で静謐な池、洲浜や出島石組・池中立石と点在するモミジが見事なアクセントになっていますね。常行堂あたりのモミジが奇麗に色づいていました。こちらでは平安時代唯一の遺構といわれる鑓水も見ることができます。
落ち着いた雰囲気の中、池の周囲を散策していると、おっ、ひときわ真っ赤に色づいたモミジを発見。そしてその脇には「TOILET」という掲示がありました。トイレのそばの紅葉は奇麗という経験則があるのですが、気のせいかなあ、気のせいだろうなあ。でも桜の樹の下には屍体が埋まっていると看破した梶井基次郎の感性とは雲泥の差ですね。入口のところには、「夏草や…」を新渡戸稲造が英訳した句碑がありました。"The summer grass 'Tis all that's left Of ancient warriors' dreams." すみません、浅学のためコメントのしようがありません。
毛越寺の隣には、藤原基衡の夫人が造営した観自在王院の庭園が復元されていました。池をめぐって散策をしていると、これまで耐えに耐えてきた曇天が小雨を落としはじめました。
これまでもってくれただけでも御の字、それでは駅はすぐ近くです、戻ることにしましょう。途中の横断歩道で男女対になった「
飛び出し小僧」を発見。うーんこういうケースもあるのか、ひとつ知見が広がりました。
それにしても寒い、"さぶいぼが出る"ってやつですね。雪にならないのが不思議なくらいです。人の温もりか熱い珈琲がほしいなと思っていると、渡りに舟、目の前に「琥珀亭」という喫茶店がありました。さっそく飛び込んでケーキセットを所望。香り高い珈琲を飲んでひと息つき、そして芳醇なレアチーズケーキを堪能いたしました。これまで公言はしていませんでしたが(たぶん)、私、レアチーズケーキが大好きです。その私が言うのですから(たぶん)間違いありません、こちらのケーキは逸品です。平泉にお寄りの節は是非お立ち寄りを。
そして丁重にお礼を言って自転車を返却、荷物を引き取ってやってきた列車に乗り込み、十分弱で一ノ関に到着。東北新幹線の乗り場に行くと、おお掉尾を飾る義経と弁慶の
顔はめ看板を発見。今回の旅は最後までついています。それでは前沢牛の駅弁で旅を締めくくろうと売店に寄ると、「申し訳ありませんついさっき売り切れました」。ちゃんちゃん。So it goes on. かわりに「平泉 義経」という駅弁を購入、食材からは何故この名がついたのかは皆目わかりませんが、それなりのお味でした。
本日の八枚、一番下は観自在王院跡です。