箱根錦秋編(3):強羅公園(09.11)

 そしてすぐ隣にある強羅公園へ。こちらは明治時代以降、首都圏の別荘地として開発された箱根・強羅地区に、主に華族など上流階級の親睦・保養施設として、1914(大正3)年に開園された日本初のフランス式整型庭園です。なおセットでつくられた和風庭園が箱根美術館の庭園だそうです。噴水を中心に整形されており、クラフトハウス、ブーゲンビレア館、熱帯植物園、ハーブ館、ローズガーデンなどの施設があります。西門を入ってすぐ左に曲がると、斉藤茂吉の歌碑がありました。「おのづから寂しくもあるかゆふぐれて/雲は大きく渓に沈みぬ」(1915) 彼はこよなく箱根を愛し、強羅の山荘に暑を避けたそうです。
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 それほど多くはありませんが紅葉を愛でながら園内を彷徨、箱根連山の借景が素敵でした。
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 そしてお目当ての白雲洞茶苑へ、鈍翁・益田孝によって創案され、三渓・原富太郎と耳庵・松永安左ヱ門に受け継がれてきた名茶室群。中でも「白雲洞」は、近代数奇者茶人の間に流行した「田舎家の席」の先駆的な作例だそうです。檜皮葺きの渋い正門をくぐると、鬱蒼とした樹木におおわれ森閑とした雰囲気です。石段をすこしのぼると腰掛待合、そして見上げると小高い場所に茅葺屋根の茶室が見えます。そこにのぼるまでのアプローチが何と魅惑的なことか、不揃いな石をリズミカルに並べた石段がうねるように上方に続いています。中に入って見学できるということなので、いそいそと近づくと、嗚呼無情。係の方が雨戸を閉めはじめました。こちらは午後四時で見学終了なのですね。致し方ない、再訪を期しましょう。せめて外観だけでも網膜とSDメモリーカードに焼き付けようと、しばし佇みました。複雑かつ狭小な地形に合わせて傍らには小屋がもうけられ、渡り廊下でつながれています。嗅覚をくすぐる木々や苔の仄かな匂い、静けさを際立たせる鴉の声、枯淡の境地に耽っているとそろそろ夕暮が迫ってきました。名残りは尽きねどそろそろ引き上げましょう。
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 途中にあった水飲み場の蛇口は小鳥をデザインした洒落たものです。堂々とした石造りの正門から外へ出ると、右から記された「園公羅強」というプレートが歴史を感じさせてくれます。そして坂道を強羅駅へとくだり、帰郷。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2010-11-13 06:13 | 関東 | Comments(0)
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