「シリーズ日本近現代史⑩ 日本の近現代史をどう見るか」(岩波新書編集部編 岩波新書1051)読了。これまでも拙ブログで、第一巻「
幕末・維新」(井上勝生)、第二巻「
民権と憲法」(牧原憲夫)、第六巻「
アジア・太平洋戦争」(吉田裕)、第七巻「
占領と改革」(雨宮昭一)と紹介してきましたが、凡百の通史とは一味も二味も違う、斬新な視角を提示した好シリーズでした。本書はその掉尾を飾る一冊です。それぞれの巻を担当した執筆者九名がその概要を述べるとともに、補論や新たな視点を提示した内容です。それはそれで充実したものですが、何よりもためになったのが、各執筆者が章末に掲げる「お薦めの五冊」です。これには脱帽、まいりました。近現代史に関する本はまあまあそこそこ読んでいるという自負があったのですが、それが雲散霧消、まだまだこんなに重要で面白そうな文献があったのかと蒙を啓かれました。さすがはその道のプロフェッショナル、その視野の広さと鋭い着眼に対していさぎよく頭を垂れましょう。いくつか紹介します。『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』(花崎皋平)、『落日の宴 勘定奉行川路聖謨』(吉村昭)、『逝きし世の面影』(渡辺京二)、『
赤い人』(吉村昭)、『日本の近代と中国の近代―魯迅を中心に考える』(竹内好)、『幻想の明治』(前田愛)、『時間』(堀田善衛)、『滄海よ眠れ』(澤地久枝)、『飯田龍太郎全集 第一巻(俳句Ⅰ)』、『苦海浄土』(石牟礼道子) ねっねっねっすごいでしょすごいでしょすごいでしょと、平野レミのようにはしゃぎたくなってきます。今、手に入った何冊かを読み進めている最中、至福の読書ライフを送っております。ブックガイドとして文句なくお薦めの一冊です。