さてどうやら道を間違えたようです。地図で確認すると、さきほどの交差点を右折するべきだったのに直進してしまいました。軌道修正して歩いていくと、数分で揖保川にかかる龍野橋に到着です。ここからの眺望は素晴らしいですね、滔々と流れる揖保川に沿い、山々に抱かれるように佇む龍野の街並みが一望できます。♪兎美味しかの山、小鮒釣りしかの川♪と口ずさみたくなるような、懐かしい光景です。
それでは橋を渡り、街の腸に食い込んでいきましょう。まずは朝の清々しい空気をすいながら下川原商店街を散策、味わい深い古い商家が散在していました。観光用にとりつくろうことなく、自然体で残されているのがいいですね。路地の先には山の姿が見通せ、まるで山々に見守られているような雰囲気です。あるお宅に「とゆに注意」という注意書きがありましたが、とゆって何だろう???
また焼き焦がした板塀、西日本に特有の伝統技法の「焼杉」[…『
建築史的モンダイ』(藤森照信 ちくま新書739)参照]もよく見かけられ、景観にいいアクセントを与えています。
その焼杉に誘われてふらふらと路地に入っていくと、大きな蔵がありました。ここが明治二年創業のカネヰ醤油の工場ですね、門前には電気式しょうゆ・もろみ販売機が設置してありました。
そのはす向かいにあるのが「うすくち龍野醤油資料館別館」、入場はできませんでしたが、洒落た洋館を門扉から見ることができました。吉井勇に「ほのかなる人のなさけに似るものか龍野醤油のうす口の味」という歌があるそうですが、一度味わってみたいものです。ここから醤油蔵と如来寺にはさまれた小道を歩きましたが、ここもいい風情でした。お寺さんの築地塀や瓦屋根、醤油蔵の黒板塀にはさまれた、小さな用水に沿った路地を、遠景の山を眺めながら散策していると、昔々ここを歩いたような心地よい既視感におそわれます。わが内なる図書館で自分なりにつくりあげた「日本の町」のイメージにぴったり合致するからでしょうか。
人気のない交差点を右折して山の方へ向かうと、戦前のものらしき古いビルが二つ並んでいました。右が龍野醤油資料館になっています。
このあたりでスタンダードな
飛び出し小僧を発見。「そうめん&コーヒー すゞむら」といういかにも龍野らしいお店もありました。
緩やかな坂道をのぼっていると、ふるさとの山に抱かれ見守られているような小学校がありました。白い塗り塀と黒い焼杉塀のコントラストがきれいなお宅をよく見かけます。なおところどころに観光案内図がありますので、道に迷う心配はありません。そして白鷺山のふもとに到着、ここには童謡の小径(こみち)・哲学の小径という遊歩道が整備されています。
本日の四枚です。