丹波・播磨・摂津編(16):山邑邸(10.2)

 さあそれでは中に入りましょう。入館料を払い、玄関からあがると「室内は写真撮影禁止」というつれない注意書き。嗚呼それはないでしょ、それは。ライト財団(?)に著作権等があるためか(建築だからそれはないだろうなあ)、はたまた絵葉書販売促進のためか、よくわかりませんが是非認めていただきたい。気を取り直して階段をのぼり二階へとまいりましょう。そうそう、この建物は4階建てですが、尾根の傾斜に沿って各階が階段状にずれて重なっているため、どの断面をとっても1階または2階建ての建築となっています。敷地や環境と一体になった建築、有機的建築(organic architecture)を提唱したライトの面目躍如ですね。応接室の入口は、ホームページの解説によると幅は約62cmと大変狭くなっています。ところが中に入ると、光に満ち溢れた広々とした空間が広がっています。この広さを強調するためにあえて入口の狭くしたのですね。茶室の躙口を思い起こさせます。それにしても何と明るい部屋であることか。両サイドには嵌殺しの大きな窓があり、正面にはバルコニーに通じる大きなガラス戸。そして壁面の最上部には、採光・通気のためのドアがついた小さな窓が連続して並んでいます。大きな窓からは下界に広がる街並みや港や海を眺望でき、まるで展望台にいるようです。『自然の家』の中でライトはこう述べています。
 住まいというものは、まず第一に庇護する覆い(シェルター)として見えなければならない。…建物を洞窟のように考えるのをやめ、風景と関係したゆったりとした覆いの姿をまず考えるようになった。外部へと開かれた眺め、内部に取り込まれた眺め。(p.18)
 「風景と関係したゆったりとした覆い」、なるほどねえ、この応接室にいると彼の思想が具現化されていることがよくわかります。そして外壁と同じ大谷石による装飾にあふれた壁が、部屋のあちこちに配置され、外部と内部の連続性を演出しています。また作り付けの長椅子・飾り棚・置台が壁面をおおいつくし、部屋全体を総合的にデザインしようとするライトの断固たる意志が伝わってきます。応接室の北側には、大谷石で作られたモダンなデザインの大きな暖炉がありますが、彼は赤々と燃える炎にも強い思い入れがあったそうですね。中央に二セット置かれた、六角形のテーブルと五角形の椅子が印象的ですが、これはライトのオリジナルではなく、所有者であるヨドコウ(淀川製鋼所)がライトのデザインを模して制作したものだそうです。そしてドアにあった葉をモチーフにした飾り銅版が部屋の随所にちりばめられ、いいアクセントになっています。ああ何時間でもここにいて寛いでいたい、と思わせてくれる素敵な応接室でした。
 ふたたび階段をのぼって三階へ行くと、足下までのびた大きなガラス窓が続く長い廊下になっています。ホームページの解説によると、窓は当時のアメリカではめずらしい外開きになっており、一般的だった上げ下げ窓をライトはあえて採用しませんでした。『自然の家』の中で、彼はこう述べています。"私は、外向きに開く窓のために闘った。開き窓(ケースメント)が家と外部空間を結び付け、外へと向かい自由な開口をつくり出すからだ。いわば開き窓というものは、単純なだけでなく、使う上でも、その効果においても、もっと人間的なもの―すなわち自然なものだったのだ。(p.55)" またこの窓にも葉をモチーフにした飾り銅版がしつらえてありました。同じく解説によると、太陽の光が窓から入ると銅板を通して床に影を落とし、まるで葉のすき間から射し込む木漏れ日のように見えるそうです。残念ながら曇りのため、その光と影による演出は拝めませんでした。またこの銅版は、色も自然のグリーンに近づけるためわざわざ緑青を発生させたそうです。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2011-02-25 06:19 | 近畿 | Comments(0)
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