丹波・播磨・摂津編(29):旧甲子園ホテル(10.2)

 そして二階へ、エントランスの上部に位置するゲーム室と、廊下を挟んだ小部屋に案内されましたが、いずれも洒落た意匠の暖炉がありました。こうした暖炉への偏愛はライトゆずりかもしれません。
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 そして二階バルコニーへ、ここからはまるで戦艦の艦橋のような煙突の様子がよくわかります。また客室部分の装飾や中庭・池を眺めることもできました。壁面や、瓦屋根の最頂部に立つ尖塔の周囲にも、「打出の小槌」のオーナメントが飾られています。
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 三階にある和室は、当時の客室の様子を髣髴とされてくれます。そういえば、今となってはお馴染みの和室と洋室を組み合わせた客室を考案したのは、遠藤新でしたね。それを実現させたのが上山田温泉笹屋ホテルの「豊年虫」で完成は1932年、つまり甲子園ホテル竣工の二年後にあたります。廊下の隅には、仲居さんが待機する小部屋がありました。案内の方によると、手厚いおもてなしという日本旅館の長所を、ホテルにも取り入れようとしたそうです。
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 そして一階東にあるバーへ。普通は薄暗い穴倉のような雰囲気にするのでしょうが、彼はあえて縦長の窓を並べ外光を取り入れ明るい部屋にしています。床には、さまざまな色と形の陶板がしきつめられ、まるでパウル・クレーの絵のようです。一画には竣工の年を示す「1930」という数字と、「TAIZAN」と刻まれた陶板がありました。制作した窯元の名でしょうか。
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 というわけで、予定では午前11時終了でしたが、興に乗った案内の方のおかげで40分ほど延長して見学できました。ディスプレイを借りて厚く感謝するともに、阪神タイガースの(スワローズを凌駕しない程度の)ご活躍を祈念いたします。最後に、後ろ髪を引かれるように、ホテルをぐるりと一周して退去しました。フランク・ロイド・ライトは『自然の家』の中で、「生活は宣言する。ガソリンスタンドはガソリンスタンドのなすべき仕事に忠実でなければならず、ゆえにそれに似つかわしい姿でなければならない。(p.88)」と言っています。ホテルらしいホテル、自分が理想とするホテルをめざして、師の影響を受けながらも、林愛作と協力して結実させた見事な建築でした。非日常的なバカンスという時間において、普段では味わえない寛ぎ・喜び・快適さを、建築において徹底的に追求した結果が、このホテルだと思います。みんなを寛がせ、喜ばせ、快適にさせる、そうした機能を備えた内部空間、その包み込まれた空間が建物の外観の姿となり、建物の実体として立ちあらわれ、それが建築となる。師のライトに見せてあげたかったですね。というわけで甲子園を訪れたら、球場で黒白模様のメガホンを振り回すのも一興ですが、ぜひ(電話で予約をして)ここ甲子園会館も訪ねてみてください。というわけで、自由学園明日館、上山田温泉笹屋ホテル「豊年虫」、真岡の久保講堂、目白の目白ヶ丘教会と経巡ってきた遠藤新の作品探訪も、これで一区切りつきましたが、これからも長いつきあいになりそうです。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2011-03-16 06:23 | 近畿 | Comments(2)
Commented by エイドリアン at 2011-03-16 17:55 x
素敵なブログですね
とてもおもしろいです
また遊びに来ます
Commented by sabasaba13 at 2011-03-20 17:03
 こんにちは、エイドリアンさん。お褒めにあずかり恐縮です。お待ちしておりますので、気軽にお立ち寄りください。
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