熊野古道編(6):紀伊田辺(10.3)

 さてそれではお待ちかねの夕御飯、駅でいただいたグルメマップで当りをつけておいた「宝来寿司」に入り、鰹の漬けとしらす丼を所望しました。滋味あふれる新鮮な鰹としらすを堪能。壁の張り紙を見ると、ここ田辺では「ひとはめ」という海藻が特産だそうです。お店の方に訊ねると、お吸い物に入っている、ワカメのような海藻がそれでした。うん、柔かいし味もいいし、気に入った。「ひとはめ寿司」を購入して、明日のお弁当にすることにしました。
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 そして紀伊田辺駅で、最終日に乗る南紀6号の特急券と指定席券を購入。ホテルに戻り、明日に備えて早めに寝ることにしたいのですが、未解決の案件が一つあります。明日の朝食をどないしよ? 明日の早朝、6:50に田辺駅前発の明光バスに乗りたいのですが、やはり朝食を食べて出すべきものを出してベストの状態で出立したいもの。できれば部屋で朝食をとりたいのですが、この時間帯でホテルにお願いするのは無体でしょうし、近くにコンビニエンス・ストア等もないのでおにぎりも手に入りません。駅構内にある喫茶店は6:30に開店、ちょっとせわしないが、いたしかたない、そこでモーニング・サービスをかきこむことにしましょう。部屋に戻ると…なんと枕元に、おにぎり一つとゆで卵とインスタント味噌汁が用意されていました。♪あーりがたやありがたや♪と「ありがたや節」を小声で歌い、宿のご配慮に深甚なる感謝の意を表しました。
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 シャワーを浴びて身を清め、酒屋で購入した地酒で五臓六腑を清め、ベッドにもぐりこんで明日の行程を確認、そして「南方熊楠随筆集」をしばし拝読。
 この人(※熊楠の友人)の言に、日本今日の生物学は徳川時代の本草学、物産学よりも質が劣ると、これは強語のごときが実に真実語に候。けだしかかる学問をせし人はみな本心よりこれを好めり。しかるに今のはこれをもって、卒業また糊口の方便とせんとのみ心がけるゆえ、おちついて実地を観察することに力めず、ただただ洋書を翻訳して聞きかじり学問に誇るのみなり。それでは、何たる創見も実用も挙がらぬはずなり。(p.35)
 うーむ、本心より学問を好む、実地・観察・創見・実用、あの超人的にして豊潤な熊楠ワールドを理解するキーワードかもしれませんね。これは、彼が履歴を求められたときに答えた一文である「履歴書」(1925)に載っていた言葉ですが、その前半部は次の文章で締めくくられています。
 小生のごときつまらぬものの履歴書は、また他のいわゆる正則に(正則とは何の変ったことなき平凡極まるということ)博士号などとりし人々のものとかわり、なかなか面黒きことなども散在することと存じ申し候。これは深窓に育ったお嬢さんなどは木や泥で作った人形同然美しいばかりで何の面白みもなきが、茶屋女や旅宿の仲居、お三どんの横扁たきやつには、種々雑多の腰の使い分けなど千万無量に面白くおかしきことがあると一般なるべしと候。(p.38)
 このあっけらかんとした天衣無縫さには脱帽… でも彼にとって、「書を読む」という行為は、性交と相通じるところがあったのかもしれません。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2011-04-19 06:25 | 近畿 | Comments(0)
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