熊野古道編(30):小口(10.3)

 橋を渡るとトイレがあったので用を足し、さて今夜の塒、小口自然の家を捜しましょう。このあたりの桜はもう満開、麗らかな春の日差しを浴びて咲き誇っていました。
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 ガイドブックの地図を頼りに、しばらく右往左往しましたが、なかなか宿が見つかりません。すると通りかかった車が止まり、初老の品の良さそうな運転手さんから「万里小路綾麿さん(仮名)ではありませんか」と声をかけられました。「さようで」「申し訳ない、実は自然の家の厨房で急な不都合がありまして」「へ」「違う宿を紹介したいのですがよろしいでしょうか」 よろしいもなにも仰せに従うしかありません。車の後部座席に乗り込みむと、不穏な想像が頭をもたげてきました。廃屋みたいな宿だったらどうしよう、いやもしかしたら新手の追い剥ぎかもしれない、いやいやこの方は実は人買いでどこかに売られて山椒大夫みたいな目にあわされるかも… その意を介せぬように車はどんどん小口から離れ去っていきます。十分ほど走ったでしょうか、車は止まり、「こちらです」と宿を紹介されました。なんだこれは!!! 出来たてほやほやのような真新しくきれいな和風の宿で、しかも温泉つき、看板には「公共の宿 さつき」と記されています。中に入り、フロントで受け付けを済ませ、部屋に案内されると、おおっ、八畳はあろうかと思われるきれいな和室。さっそく荷をおろしていそいそと温泉へ向かうと、露天風呂も併設された立派なお風呂。垢を落とし、山並みを眺めながらのんびりと湯に浸かり、ロビーに出るとフルーツ牛乳を売っていました。くいっと飲みほすと、最新式のマッサージチェアがありました。有料なのは許してつかわそう、コインを入れてヴインヴインと体をほぐしてもらえば、もう夢見心地、この世は極楽さっ。嗚呼、こんな素敵な宿にめぐりあわせてくれて、熊野の神様、餓鬼の皆様、山ノ神様、ありがとう。那智大社と速玉大社では必ず賽銭を奉納し、ご飯を三粒必ず落とし、お土産に赤福を必ず買って帰ると心に誓う信心深い私でした。なお部屋には、さきほど歌碑で見た長塚節の「かがなべて待つらむ母に眞熊野の羊歯のほ長を箸にきるかも」という歌の色紙が貼ってありました。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2011-05-24 06:16 | 近畿 | Comments(0)
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