熊野古道編(40):大門坂(10.3)

 そして大門坂が眼下に続きます。熊野那智大社の旧参道、ここも熊野古道の一部です。解説板によると、全長約600m、267段の石段、両側には132本の杉の古木が並んでいます。さっそくおりていきましょう。石畳は最近整備されたもののようで、それほど古色はありませんが、雨に濡れて美しい風情です。そして見事なのが両側の天を衝くような杉並木。両者があいまって、これぞ熊野古道!という情緒を醸し出していました。
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 途中には中辺路最後の王子である多富気王子跡がありました。お気づきのように、小雲取越・大雲取越には王子はありません。先述のように、滝尻王子から近露王子を経て本宮を参詣、熊野川を舟で下って新宮に行き速玉大社を参詣し、陸路でここ那智大社を詣で再び新宮に戻り、舟で熊野川を上り本宮からは同じルートで帰路をとるというのが正式な熊野詣でだったそうです。よってここが最後の王子となるのですね。
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 さらに大門坂をおりると入口のところにはそれはそれは大きな夫婦杉が道の両側に屹立していました。さて、すこし先にあるというバス停からバスに乗って宿に戻ることにしましょう。人家のある小路を歩いていると、あるお宅に「南方熊楠が三年間滞在した大阪屋旅館跡」という立て札がありました。ほおー、ロンドンから帰国した熊楠が、那智原生林で粘菌類の採集に励んだ際の根城にした旅館がここにあったのか。偶然とはいえ、神意を感じさせてくれるような出会いでした。
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 やってきたバスに乗り込むと、バスは羊腸の坂道を上り、数分で那智のバスターミナルに到着です。五時の夕焼けチャイムは、「野バラ」でした。なかなか洒落ていますね。夜の九時にはおやすみチャイム「ふるさと」が流れたことも付言しておきましょう。祝杯のための地酒を土産屋で購入し、宿に戻り、風呂をあびました。夕食を取りに食堂に行くと、家族連れとカップルと若い男性が一人、テーブルについておられます。彼の隣に座り夕食をいただきながら世間話をすると、明日・明後日と大雲取越・小雲取越を縦走して本宮に向かうとのこと。天気予報によると明日は一日雨模様です。無事を祈って別れました。
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 部屋に戻り、バッグから「ジョイフルマップシリーズ 熊野古道」(デージーエス・コンピュータ)を取りだし、一献かたむけながらこれまで歩いてきた道を正確な山岳地図で確認。いろいろな光景が走馬灯のように頭の中で渦巻きます。明日は新宮をぶらついた後、12:45発の南紀6号で帰る予定です。それでは布団にもぐりこんで「南方熊楠随筆集」を読み、寝ることにしますか。おっ彼が大逆事件に言及したところが二カ所あるぞ。
 また合祀のもっとも甚だしかりし三重和歌山の交界点たる新宮町に大逆事件に最多数(六人)の逆徒を出せり。(p.445)

 神職の俸給上がりて何の政教に益なきは今日神社合祀すればするほど土地の人悪くなり、二本第一の多数の官公吏犯罪を当県より出し、また合祀もっとも励行されて神武帝の社をすら公売して悔いざりし新宮町に大多数の大逆徒を出せしにて知るべし。(p.456)
 これは意外でした。熊楠さんは、神社合祀およびそれによって神職俸給がアップした結果、敬神の心が失われ人心が悪くなり、ひいては天皇暗殺を計画する"逆徒"があらわれると主張しているのですね。あくまでも合祀に反対するための方便として引用した事例なのか、本気でそう思っているのかは判然としませんが。明日はその新宮で大逆事件関連の史跡や物件を探訪したいと思います。心地よい疲労とともに、いつの間にやら爆睡…

 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2011-06-06 06:21 | 近畿 | Comments(0)
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