「アメリカの国家犯罪全書」

 「アメリカの国家犯罪全書」(ウィリアム・ブルム著 作品社)読了。著者のウィリアム・ブルムはアメリカ国務省の外交担当部門に勤務していましたが、ベトナム戦争に反対して辞任、以後アメリカの国家的犯罪・外交政策の暗部を分析し告発し続けている方です。アメリカ政府・米軍・CIAが世界中で行ってきた主なテロ支援、拷問や洗脳、暗殺、盗聴、選挙操作、麻薬製造、毒ガス、生物兵器使用、虐殺を網羅し紹介しています。断片的には知っておりましたが、こうして通読するとその国家犯罪のめくるめく有様にはあらためて愕然としました。ここまでやっていたのか…

 圧巻だったのは、1945~現在にいたるまでの、アメリカによる他国への介入のリストです。「まもなく、あなたの近くにも訪れるだろう」という副題がついています。中国、フランス、マーシャル諸島、イタリア、ギリシャ、フィリピン、朝鮮、アルバニア、東欧、ドイツ、イラン、グアテマラ、コスタリカ、中東、インドネシア、西ヨーロッパ、英領ギアナ、イラク、ソ連、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、エクアドル、コンゴ、アルジェリア、ブラジル、ペルー、ドミニカ、キューバ、インドネシア、ガーナ、ウルグアイ、チリ、ギリシャ、南アフリカ、ボリビア、オーストラリア、イラク、ポルトガル、東チモール、アンゴラ、ジャマイカ、ニカラグア、フィリピン、セイシェル、南イエメン、韓国、チャド、グレナダ、スリナム、リビア、フィジー、パナマ、アフガニスタン、エルサルバドル、ハイチ、ブルガリア、アルバニア、ソマリア、イラク、ペルー、メキシコ、コロンビア、ユーゴスラビア… 煩雑になるので年次は省略しますが、いやはや凄まじいものです。

 よく分かったのですが、「アメリカ政府と企業の利益・利潤追求を妨害する存在・勢力を抹殺する」というのが介入の主な理由です。多くの場合、自国の一般市民がアメリカ政府・企業の犠牲になるのを食い止めるために行われた改革・革命・運動が弾圧の対象となっています。そして冷戦期にはそうした存在に「共産主義者」、冷戦後は「テロリスト」「麻薬密売人」というレッテルをはりつけているのですね。「共産主義者」と「テロリスト」は、「アメリカ政府と企業に敵対する者」と定義してもいいかもしれません。そう考えると、第二次大戦後の歴史も書き直した方がいいと思います。「共産主義勢力の侵略・拡大と、それを食い止めようとする自由と正義と民主主義の使者アメリカ」という図式では、戦後の世界を見誤ってしまうのでは。文中でブルムはこう書いています。
 冷戦から続いている現在の状況が、どんな名が与えられるにせよ、裕福な人々による貧しい人々に対する終わりなき戦争の新段階と見なすことができる。そして、ソ連の存在と影響力がなくなった現在、アメリカの介入は以前より容易になったのである。
 戦後の世界を要約する見事な184文字です。その立証のためにもぜひ「ソ連の国家犯罪全書」を読んでみたいですね。たぶん120ページぐらいになるような気がします。(「アメリカの国家犯罪全書」は403ページ)

 なお日本に関しては、「選挙操作」という章に下記の記述があります。
 CIAは、国会選挙で自民党を一議席一議席支援するために、何百万ドルもの予算を費やし、日本社会党を弱体化させるために策動した。その結果、自民党は38年にわたり権力の座を維持した。(p.279)
 というわけで多くの方に読んでいただきたい本ですね。ブルム氏が「テロリスト」として抹殺され、作品社が「麻薬密売業者」として爆破される前に、ぜひ入手することをお勧めします。あっ、もしこのブログがある日突然消えていたら…
by sabasaba13 | 2005-04-30 07:02 | | Comments(0)
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