豊橋編(11):四谷千枚田(10.4)

 ほとんど車の姿を見かけない長閑な車道を、アハハハと呵々大笑する山々や、それを映す水を張った田や、点在する集落を眺めながら気持ちよく歩いていきます。やや上り道ですが、清々しい眺望を楽しみながらの散策なのでまったく苦になりません。途中に、付近から集めたのでしょうか、石仏・石造物群がありました。ほのぼのとした気持ちになってそばに寄ると…観音様や五輪塔が持ち去られる被害があり、不審人物を通報してほしいという看板があります。嗚呼なんてこったい、憤怒を通り越して哀しみすら覚えます。その地域を見守り、人々の信仰を集めてきた大切なものなのに。途中にあった商店にはまたまた「長篠合戦のぼりまつり」のポスター、「心打ち抜く火縄の響き!!」という土臭いキャッチコピーがなかなかいいですね。
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 そして予想通り三十分ほどで四谷の棚田に着きました。おおっ、耕して天に至る、山と山にはさまれた細長い斜面に築かれた無数の田んぼに眼を奪われます。意図したものではないにしろ、見事な造形です。そして生きるという営為の荘厳さに、いつものことながら胸を打たれました。ただ次のような、心痛む看板がありました。「私はこの付近で草刈りをしている者です。最近、心無い人が捨てられた空缶、空ビンで大怪我をしました。お願いですからゴミは捨てないで下さい。鞍掛山麓千枚田保存会」 さきほどの石仏盗難の件といい、この件といい、他者の痛みに対する想像力の欠落という恐るべき状況に陥っている人が多いのかもしれません。ま、他者の痛みと己の利福がトレード・オフの関係にあるのが、資本主義の本質。このシステムを私たちが受け容れ臣従する以上、"没法子"と呟いて溜息をつきましょう。
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 さて残された時間は十数分、寸暇を惜しんで棚田の間を歩きまわることにしましょう。残念ながら代掻きにはまだ早いようで、無数の田の満面に水を張った幻想的な光景には出会えませんでした。それでも、粒粒辛苦を物語る大小の棚田や石垣、瑞々しい緑を抱く山なみ、微かに聞こえる水音や鳥の声、清冽な微風を十二分に満喫できました。ほんとは天辺まで歩いて、上から棚田を一望したかったのですが、そろそろバス停にもどらねばなりません。後ろ髪を引かれるように棚田を去り、ゆるい下り道をてくてくすたすたと歩き、かろうじて9:17発のバスに間に合いました。
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 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2011-06-28 06:18 | 中部 | Comments(0)
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