筑波山編(3):石岡(10.5)

 まず肝っ玉がぶっとんだのが喫茶店「四季」。いいかげんに模倣したコリント式の柱、屋上のわけのわからない三つの突起物、適当に配置されたアーチ。これほどキッチュで野暮ったくて面白い建物にはそうはお目にかかれません。解説によると、1930(昭和5)年頃に建てられた貸店舗だそうです。西欧建築のフレーバーを恥も外聞もなく天上天下唯我独尊的にちりばめた匠の剛毅な志には驚嘆しました。せっかくなので珈琲と軽食でもいただこうかと中に入ると、内部は普通のつくり、地元の方らしき老婦人がぽつねんと珈琲を飲んでいましたが、店主の姿が見当たりません。茫然と立ち竦んでいると、その女性が渋い声で「かずちゃーん」。「はいはい」と店の奥から出ていらした、こちらもご老齢の夫人に珈琲とサンドウィッチを注文。すると「はい、いまパンを買ってきますのでお待ちください」 ちょちょちょちょちょちょっと待った、それほどのんびりとしてはいられません。あわてて珈琲のみの注文に切り替えました。じゅるじゅると珈琲をすすりながら観光地図でこれから歩く行程を確認していると、いつの間にか買い物に行っていたらしいご主人が戻ってきて、「おいしいですよ」と一枚の食パンをくれました。嗚呼、伊達直人がこういう人の情けに触れていたら、彼の人生もきっと別なものとなったであろうに。有難く頂戴して、一口一口かみしめながら味わわせていただきました。
 「四季」の前にある表具師「月泉堂」も、観光地図には載っていませんが見逃せない物件。屋根のついた古風な看板と、それをささえる繊細な意匠の金具が素晴らしい。
c0051620_8134956.jpg

 金丸寿通りをさらに南方向に歩いていくと、1932(昭和7)年頃に建てられたという「栗山呉服店」があります。典型的な商家建築ですが、二階ガラス戸の瀟洒な組子が洒落ています。
c0051620_814317.jpg

 この通りには、パンフレットには載っていない優品がまだまだありました。土管を利用した非常用水、どんどんどんと千鳥破風三連発が並ぶ天守閣のようなお宅、二階部分が右手にせりだした下見板張りの白い洋館、大きな屋根の描くスカイラインが眼に心地よい一階建ての町屋、いずれも心に残る物件でした。
c0051620_8145551.jpg

 この通りの正面突き当りにあるのが北向観音、豪奢な彫り物がこの町のかつての財力をうかがわせてくれます。
c0051620_8151521.jpg

 右に折れると、安政元年創業の造り酒屋「府中誉」があらわれました。代表銘柄の「渡舟」は、幻の酒米渡船を原料米とした全国唯一の酒だそうです。古風な蔵と恰幅のよい長屋門が見事な景観をかたちづくっていました。

 本日の二枚です。
c0051620_815369.jpg

c0051620_8155753.jpg

by sabasaba13 | 2011-07-09 08:16 | 関東 | Comments(0)
<< 筑波山編(4):石岡(10.5) 筑波山編(2):石岡(10.5) >>