筑波山編(6):石岡から土浦へ(10.5)

 そして本日最後の物件、平松理容店に到着。ブラーボ(バ?)! 失礼ながらとても床屋さんには見えない、まるで貴族の館のような堂々たる建物です。1928(昭和3)年頃建てられたということは、大火の前年ですね。よくぞ生き延びてくれました。もしかすると、ここ石岡における看板建築の嚆矢・先駆者かもしれません。大火事で家を失い、再建しようとした商店主が、「平松さんちみたいな家にしよう」と競い合った結果、この街並みが生まれた可能性もありますね。ファサードだけプチ洋風建築にしつらえた八百屋さんの倉庫、シンプルながらもアンシンメトリックな造形がピリリといい味付けなっている水酉酒店も忘れられません。
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 その近くには煉瓦造りの謎の構築物や、緑に覆われた謎の柱がありました。後者についてはグリーン・モンスターと命名し、以後追っかけていく所存です。いやはや最後まで目が離せません。
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 というわけで、白昼夢を見たような、タイムスリップしたような、何とも魅惑的な徘徊でした。まるで近世から近代にいたる日本の商家建築の野外博物館といった趣です。しかし観光のために整備して大々的に売り出そうという商売っ気はあまりないようで、「勿体ないから修繕して使い続けようぜ」という自然体がほのかに感じられます。まだ日本にもこんな町が残っているのかと思うと、居ても立ってもいられません。面白い街を求めて明日も旅行く。
 石岡駅から常磐線に乗って、十五分ほどで土浦に到着。駅前からバスに乗って筑波山まで行こうと思いますが、バスは一時間に一本程度。次のバスまで三十分ほど時間があります。実は持参したガイドブックによると駅から五分ほど歩くと「土浦ラーメン」という美味しいラーメン屋さんがあるそうです。うーんどないしよ…兼好さんは「しやせまし、せずやあらましと思ふ事は、おほやうは、せぬはよきなり」(第九十八段)と言っているし、ツルゲーネフさんは「乗りかかった船には、ためらわず乗ってしまえ」と言っているし… うん決めた、腕ひしぎ十字固めでツルゲーネフさんの勝ち、食べにいってしまいましょう。自称神に愛されし男、なんとかなるでしょう。てくてくと速足で歩いて「土浦ラーメン」に到着し、さっそく注文して癖のない味わい深いスープとともにたいらげました。
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 おおバス発車五分前だ、あわてて代金を支払い、ダッシュ…するほどの体力と気力はないのでギャロップで駅前のバスターミナルへと急ぎました。歩道橋から見下ろすと、筑波山口行きのバスが私を待っています。よかった間にあった、軽やかに階段を駆け降りると、プシュー… 無情にもドアが閉まり、排気ガスの匂いとともにバスは出発してしまいました。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2011-07-16 07:52 | 関東 | Comments(0)
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