天浜鉄道・中津川編(3):秋野不矩美術館(10.7)

 出発進行! わずかな乗客を乗せた一両編成のローカル列車はよっこらしょと動きはじめました。もちろん単線、ディーゼルカーなので架線がなく見晴らしも最高、前方の窓に陣取ると山なみや田植えの終わった田んぼなど美しい風景を一望できます。
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 桜木駅のレトロな駅舎は、仲間由紀恵主演のテレビドラマ「エラいところに嫁いでしまった!」で使用されたそうです。原谷駅は、「WATER BOYS 2」のロケ地、昔ながらの田舎の雰囲気や佇まいをよく残しているということなのでしょう。
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 遠州森駅を過ぎると、ここからは未知の領域。そして掛川から45分ほどで天竜二俣駅に到着です。もう使用されてはいませんが、通票受器や通票渡器や腕木式信号機など、古い鉄道物件が野外展示されていました。鉄ちゃんだったら随喜の喚声をあげそうですね。
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 ただいまの時刻は9:45、これから秋野不矩美術館を見学して戻ってくれば、転車台見学の集合時間10:40には間に合うでしょう。駅員の方に確認すると10:50に来ればよいとのこと、ついでに付近の地図と美術館の割引券をいただきました。さあそれでは出発、駅前には旧国鉄二俣線の時代に使用されていた蒸気機関車が野外展示されていました。二俣川に沿ってしばらく歩くと、「川で遊ぼう!」という看板がありました。その意気やよし、安全への過剰な希求が蔓延するこのご時世に、一陣の爽やかな風を送り込むメッセージです。
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 その先には「ようこそ二俣へ」という、二俣の町を紹介する詳細な観光案内の看板がありました。なになに、おっこれは買いですね、私好みの古い町屋・商家・看板建築が目白押しです。美術館見学を早めに切り上げて、二俣の町並みに寄ってみましょう。二俣大橋を渡って、坂道へと右折すると、上方にある木々の間からまるで砦のような異形な姿が垣間見えます。そして坂をのぼりきると、得も言われぬ存在感とともに、秋野不矩美術館が屹立していました。直方体と四角錐を豪放に組み合わせた力強いフォルムにまず圧倒されます。そして土塗りと焼杉の壁、屋根のスレート葺きなど、多用される自然素材の暖かさ。さすがに頬ずりはしませんでしたが、思わず触れてしまいました。設計は建築史家の藤森照信氏、なお焼杉についてのエピソードや苦心談について「建築史的モンダイ」(ちくま新書739)の中でふれられています(p.96~)。
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 荒削りの重厚な木製ドアから中に入ると、土足禁止。内部もむき出しとなった荒削りの柱や梁、漆喰塗の壁面など、自然素材に満ち満ちています。トイレの男女表示も、漆喰の上に手書きされた温もりのあるもの。展示室の床は大理石や籐ござとなっており、その質感を足の裏で感じることができるようになっています。なるほど土足禁止はこのためだったのか、いっそのこと靴下を脱いで裸足になればよかったと思っても後の祭り。
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 ついつい建物のほうに眼がいってしまいますが、秋野不矩の絵も見ごたえがありました。インドの風土・大地・自然・動物・建物・人間を、虚飾や夾雑物をまじえずに描き切ったその絵には圧倒されます。とくにそのマチエールの存在感には眼を瞠ります。「美の巨人たち」によると、インドの赤や黄色の土に膠を混ぜて、岩絵の具として使ったそうです。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2011-07-23 07:41 | 中部 | Comments(0)
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