常陸錦秋編(9):水戸(10.11)

 さあそれでは石田屋へ向かいましょう。途中にあったのが天狗納豆の(たぶん)本社。それにしても何で納豆は水戸の名物なのでしょう??? ウィキペディアで調べてみると、「明治以降、鉄道(水戸線)の開通に伴い、土産品として売られた(天狗納豆が発祥とされる)のをきっかけに、産地としてもっとも知られている」といことでした。しかし、しかあし、それを上回る衝撃の事実が判明しました!!! この記事の"天狗納豆"の項目をクリックすると…
 江戸時代末期の安政元年に水戸藩士で勤王家の笹沼家に生まれた初代笹沼清左衛門が明治22年に興し、今日の水戸納豆の礎を築いた。中世から近世初期の常陸国主・佐竹常陸介旧臣の系譜を持つ藩士庄屋神官層が主軸となり、八代水戸藩主徳川斉昭公に重用された「藩政改革・尊皇攘夷派」に属した。故に、明治維新の魁となった水戸藩の尊皇攘夷激派、「水戸天狗党」の名を戴き「天狗納豆」とした(納豆メーカーのブランド名にキャラクターが多いのは「天狗」を模倣したため)。極早稲の小粒大豆を使用したことが好評を得たこと、また、近代的食品工業としての製造技術を確立し、更にはそれまでの販売員に頼る手法ではなく、開通間もない鉄道の駅や観光地(偕楽園)などでの販売を行う等販売ツールの革新もはかったことで今日の名声を得る。現在、数社の「天狗」ブランドが存在するが清左衛門の流れを引くのは二社。それぞれ「総本店」と「水戸元祖」を名乗り「老舗」の暖簾を守っている。
 いやはや、己の軽忽さには溜息が出ますね。天狗党→水戸→納豆→天狗納豆と考えを馳せるべきでした。それにしても、尊王攘夷派の背後にこうした豪商・豪農が存在し、資金援助をしていたことは注目すべき史実です。黒羽清隆氏曰く、草莽と浪士は豪家の農商の使徒だったのですね。(『黒羽清隆歴史教育論集』 竹林館 p.125) えてして、"愛国心と正義感にあふれた薩長土肥の志士が蒙昧な幕府を倒し新生日本を築いた"という陳腐にステロタイプ化されたイメージが流布されていますが、黒羽氏は"経済史のうらうちを欠いた中下級武士=「薩長土肥」一元論という亡霊"と一刀両断されています。いったい彼ら豪商・豪農は草莽・浪士・志士を走狗として、幕藩体制を破壊しどんな社会をつくろうとしていたのか。ま、小泉政権が財界の使徒として「失業と飢餓と貧困の恐怖なくして成長なし」という新自由主義路線を推し進めたように、民衆を酷使して自由に金儲けができる体制=自由主義を希求していたのでしょう。そうした視点から幕末・維新史を見直したいものです。以前にも紹介しました 「持丸長者 幕末・維新編 日本を動かした怪物たち」(広瀬隆 ダイヤモンド社)という好著もありますが、さらなる研究の前進を期待します。
 なお余談ですが、前述のウィキペディアに、北大路魯山人の納豆の作り方が紹介されていました。「まず納豆になにも加えずに練る。白い糸状のものがたくさん出て納豆が固くなり練りにくくなったら、醤油を少量たらしてまた練る。練る、醤油を入れる作業を数回繰り返す。糸がなくなってどろどろになったところに辛子や薬味を入れてかき混ぜる」(『魯山人味道』 中公文庫) 醤油を少しずつ入れるというのがポイントなのでしょうか、今度やってみます。もひとつ余談、薬味として長ネギのかわりに玉ねぎを入れるともっと美味しいですよ。公序良俗に反するようでこれまで発表していなかったのですが、納豆の上にマヨネーズをかけるとさらに美味しさは倍増。口内にひろがるニチャニチャ・ネバネバ・ドロドロ感が大人をして愉悦の境地に導いてくれます。お試しあれ。

 そして石田屋に到着、念のため品書きを拝見すると、「まぼろしの逸品 地鶏チャーシュー」とありました。女将に訊ねると、それは水戸藩ラーメンにしか入れないとのこと、無念。初志貫徹、スタミナラーメンを注文することにしました。キャベツやレバーを炒めて甘辛の餡にからめて麺に乗せた一品がご来臨。そういえば今日は花貫渓谷でハム焼きを食べただけでしたね、ほかほかとした湯気に包まれたラーメンを前に意識は飛びトランス状態となって一気呵成に完食、たいへんおいしゅうございました。すると女将が小皿に入れた地鶏チャーシューを「どうぞ」と差し入れてくれました。感謝感激雨あられ、♪あたたかい人の情けも、胸を打つあつい涙も、知らないで育った僕は変人さ♪ このご厚情、一生忘れません。こういう人情に出会えるのも旅の楽しみの一つです。親切にされると、次は自分が誰かに親切にしてあげたくなりますね。「世界を救うのは愛ではなくて、親切だ」というカート・ヴォネガットの言葉が胸に響きます。なお肝心の味の方は…まあまあの美味しさでした。そして酒屋で地酒を購入し、ホテルで丁重にお礼を言って自転車を返却、部屋に入ってシャワーを浴び、明日の旅程に思いを馳せながら一献傾けました。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2012-03-12 06:18 | 関東 | Comments(0)
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