荻窪編(5):荻窪(10.11)

 そして角を右に曲がると、杉並中央図書館に到着。ここにはガンディーの銅像があるそうです。裏手にまわると、おお、紅葉に包まれる中、サリーを着て、毅然とした表情で力強い一歩を踏み出すガンディーの銅像がありました。"汝が声、誰も聞かずば、ひとり歩め、ひとり歩め"というタゴールの詩を思い起こさせる一歩です。
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 「ガンディー 反近代の実験」(長崎暢子 岩波書店)という素晴らしい本を読んで以来、深く深く畏敬する人物です。暴力の否定、融和と寛容、最近「エラスムスの勝利と悲劇」(シュテファン・ツヴァイク みすず書房)を読んでこうした精神の源流がデジデリウス・エラスムスにあることを知りましたが、その精神を受け継ぐとともにこれに(エラスムスにはない)行動力としたたかさを加えてインドを独立へと導いた稀有なる人物です。彼の事蹟や言葉を思い起こしながら、暴力と対立と不寛容が渦巻くこの世界の片隅でしばらく佇みました。
 しかしまたなぜここに彼の銅像が? 解説板にはこうありました。「東京都杉並区にこのガンジー翁の銅像を、2008年11月6日にガンジー・アシュラム(修養所)再建財団創立者・インド国会議員・故ニルマラ・デシュパンデ女史の遺志により、ガンジー翁の精神に基づいて、世界平和と相互理解が強められることを祈念して、贈る」 うーん、いまひとつわかりません。中に入れば何か手掛かりがあるでしょう。まずは地下にある洒落たティールーム「Leaf&Leaf」でサンドウィッチと珈琲をいただき、その前にある谷川俊太郎と石井桃子の自筆原稿や写真、プロフィールなどが展示されているコーナーを拝見。"この地上で木とともに生きることの恵み"(谷川俊太郎)、"子どもたちよ 子ども時代をしっかりとたのしんでください。おとなになってから老人になってから あなたを支えてくれるのは子ども時代の「あなた」です"(石井桃子)、いい言葉だなあ、胸に刻みましょう。
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 そして一階にあがると、「常設展示 ガンディー チャンドラ・ボース」というコーナーが一角にあり、二人に関する写真や書物が展示されています。その解説によると、日印交流年の前年である2006年に杉並区長を団長とする「日本・インド地方議員友好親善訪問団」が訪印した際、ガンディー修養所再建トラストから杉並区に対し図書が寄贈され、平和と友好への思いが託されたそうです。なおこの団体はガンディー主義(非暴力・不服従運動)に基づき、国際社会の平和をめざす慈善団体で、国際平和センターの設立、社会的弱者や貧困層を救うガンディー主義諸機関への支援、書籍・資料の発行、人材の育成活動などを目的とするとのこと。どうやらこの団体からあの銅像も寄贈されたようです。
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 図書館から出てふたたびガンディー像の前へ。彼がアジア・太平洋戦争の最中、日本人に贈ったメッセージ「すべての日本人に」の全文が読みたくて「わたしの非暴力2」(マハトマ・ガンディー みすず書房)を購入したのですが、次のような一節がありました。
 わたしがこうしてあなたがたに訴えかけているのは、わたしたちの運動が、あなたがたやその同盟国を正しい方向に導くよう影響を与えるかもしれない、またそれが、あなたがたの道徳的崩壊と人間ロボットへの転落に終わるにちがいない軌道から、あなたがたと同盟国を救出することができるかもしれないという希望をもっているからです。(p.37~38)
 道徳的崩壊と人間ロボットへの転落…嗚呼、マハトマ、私たちは今その崖っぷちにいるのです。どうすればいいのでしょうか。「人間の正当な要求を超えた富の蓄積はすべて盗みである」というガンディーの言葉がアリアドネの糸になるのかもしれません。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2012-03-30 06:20 | 東京 | Comments(0)
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