浜離宮編(1):浜離宮(10.11)

 「江戸東京の庭園散歩」(田中昭三 JTBパブリッシング)というたいへん面白い本に出会えました。キャッチコピーは"江戸三〇〇余藩の大名が造り上げた回遊式庭園の数々。その面影を辿りながら江戸に花開いた庭園文化を探る" そう、東京に残る大名庭園の由緒を語るとともに、その庭園がどのような意図のもとにつくられたのかを文献や現在の姿から読み解こうという、志の高い本です。園内地図や見どころ・ビューポイントの紹介もあり、コンパクトなので持ち運びにも便利。つきあいは長くなりそうです。今回は紅葉の名所という噂がないこともないような気がする浜離宮・芝離宮・旧安田庭園を歩いてみることにしました。
 都営地下鉄12号線汐留駅から歩いて数分ほどで浜離宮恩賜庭園に到着です。でも"恩賜"などという恩着せがましい形容詞は即刻とりのぞいてほしいですね。もとはと言えば、民衆から絞り取った税で造園したのですから。ま、それはさておき、ここは「西之丸御用屋敷」「浜御殿」と呼ばれた将軍家直々の別邸、言わば将軍一族の遊び場にして迎賓館、そして海軍基地でもあったという庭園です。最大の特徴は、江戸湾の海水を引き入れた「潮入りの庭」。さあそれでは徘徊をはじめましょう。「"恩賜"だったら入園料をとるんじゃねーよ」とぶつぶつ呟きながら300円を支払って園内へ。うーん、期待していたのですが、あまり紅葉は見当たりません、無念。右手の方へ歩いていくと「鴨塚の碑」がありました。後ほど触れますが、ここには二つの鴨場があり、捕獲された鴨を供養するための碑です。
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 まずは小さな池のような新銭座鴨場に到着。細長い水路とその奥に土を盛り上げてつくった小屋がありましたが、これが鴨場ですね。
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 そして馬場跡を横切ると、広大な潮入りの池に到着です。
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 やはり紅葉は少ないのですが、鏡のような水面に中島の御茶屋や雪吊りをした松が映って見事な景観でした。ただ背後に建ち並ぶバブリーな高層ビルが目障りですけれど。"人間の正当な要求を超えた富の蓄積はすべて盗みである"(ガンディー) ま、その姿が揺らぎながら水面に映るシュール・レアリスティックな光景は楽しめますが。
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 なおこの池には淡水魚と海水魚が入り混じり、ボラやウナギ、キス、コノシロなどが釣れ、十一代将軍家斉はお気に入りだったそうです。ちなみに浜離宮に将軍が御成りした回数は338回、その中でも稀代の遊び人・家斉が群を抜いて248回だったそうです。家斉と言えば在位五十年、十六人の妻妾を持ち男子26人女子27人の子をもうけ(精力増強のためオットセイのペニスを粉末にしたものを飲んでいたそうな)、政治を顧みず、遊興に精を出して幕府財政を傾けた無能にして度し難い将軍というイメージが流布されています。それは確かなのでしょうが、よく考えてみれば、そうした散財は結局民間の利益となったのですよね。言わば一種の公共事業と言っていいのではないか。そのお陰で江戸の経済が潤い、豪商たちによって化政文化が生み出され育まれたと考えます。家斉がいなかったら、春信も歌麿も写楽も登場しなかった…というのは極論かな。ひたすら権力財としてお金を増やし続ける昨今のブルジョワジーよりはましかな、という気がします。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2012-04-03 06:21 | 東京 | Comments(2)
Commented by さっと at 2012-04-03 23:40 x
こんばんは。
いつもステキな画像に癒されてます。
「鏡のような水面」とてもきれいですね。
うーん、ぜひ、生で見てみたい!
Commented by sabasaba13 at 2012-04-06 21:36
 こんばんは、さっとさん。過分なお誉めの言葉、恐縮です。これからも美しい風景を求めて幾山河越えていきたいと思います。子孫に何を残したかでその時代の価値が決まるとすれば、こんな素敵な庭を残してくれた江戸時代、決して捨てたものではないと思います。それにひきかえ…
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