甲斐路編(3):猿橋(11.5)

 駒橋発電所から数分で猿橋に到着。おお素晴らしい、萌えるような新緑の渓谷に、複雑な構造の刎(はね)橋・猿橋がかかっていました。刎ね木を何本も重ねて、中空に向けて遠く刎ねだし、上部構造を組み上げて橋にする構造ですね。そのユニークな相貌は、たしかに日本三大奇の名に値します。他の二つは、錦帯橋(岩国)と神橋(日光)だそうな。名称の由来は、猿が互いに体を支えあって橋を作ったのを見て造られたという伝説からつけられたそうです。現在の橋は、1984(昭和59)年に架け替えられたもの。さっそく橋を渡ってみると、すこし向こうに八ツ沢発電所一号水路橋 を見ることができました。橋のたもとにあった「大黒屋」には、国定忠治の顔はめ看板がありました。ここは彼の定宿で、ある時追手の役人に取り囲まれ、猿橋から桂川の激流に飛び込んで窮地を脱したそうです。
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 それでは大野調整池堰堤へと向かってもらいましょう。途中で中山道の宿場・鳥沢宿を通り過ぎましたが、往時の俤はありません。そして中山道の一里塚を見学して、堰堤に到着。
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 猿橋から四十分ほどかかりました。芝生に覆われた、何の変哲もない堰堤に見えますが、実は日本初の本格的発電用アースダムにして、完成当時堤高が日本一だったそうです。この調整池は、はるばる水路で運ばれてきた水を昼間に貯めておき、夜間に発電に使うためにつくられました。なるほど、昼間における工業用電力が主体となる今と違って、昔は暖房や電灯のため夜間の方が電力使用量が多かったのですね。
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 そして二十分ほどで八ツ沢発電所に到着。残念ながら金網越しに遠望しかなかったのですが、四本の水圧鉄管の迫力ある巨躯を堪能することができました。この発電所は、日本で初めての大規模な調整池式発電所。水路の途中に調整池をつくることにより水量を調節して発電するため、数日間の発電量をコントロールすることができる発電所ですね。建設当時は水力発電所として東洋一の規模を誇り、現在も稼動しています。そして十分ほどで中央本線の四方津駅に到着、運転手さんに別れを告げ、大月へと向かいます。大月駅で富士急行に乗り換えますが、列車はほぼ一時間に二本。ちょうど発車した後で、三十分弱待たされるはめになりました。駅構内に蕎麦屋があったので品書きを見てみると、おっ、吉田うどんがあるぞ。"腰の強さは天下一品"、富士吉田市の名物うどんですね。ご当地B級グルメハンターとしては、逃げるわけにはいきません。うっしゃあ、どっからでもかかってこい。さっそく入店して注文、テーブルに能書きがあったので抜粋して紹介しましょう。"富士吉田は標高が高く米作に適さなかったことから、独自のうどん文化が育まれました。…「吉田うどん」の最大の魅力といえば固いこしです。…富士山の清冽な澄んだ伏流水を使うため、喉ごしと風味が生きるうどんが出来上がるのです。…お好みで摺種(すりだね)をいれてお召し上がりください。少々辛いですが癖になります" すりだね? お店の方に訊ねると、唐辛子をごま油で練った薬味だそうです。そしてご来臨、おお苦しゅうないぞ、ちこう寄れ。容器から摺種を気持多めに取って天辺にトッピング。うむ、大言壮語するだけあって、しこしこもちもちとした歯応えでした。摺種はほんとに中毒になりそう、ゴマの香りと唐辛子の辛味が絶妙のコンビネーション、今でもその風味がフラッシュバックします。

 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2012-09-23 06:16 | 中部 | Comments(2)
Commented by 音夢鈴ーねむりんー at 2012-09-23 15:49 x
はじめまして。鍵盤屋音夢鈴と申します。
長らく鍵盤屋を生業としております。
さきほど斎藤先生のドキュメンタリー動画から
WEBサイーフィンを始めまして、講義録のご本へ・・
そしてこちらの2007年の記事へとたどり着きました。
そして、さらにトップにうかがってさらにびっくり!
あの・・私、上記の場所のごくご近所に住んでおります。
駒は市発電所には祖父がかかわっておりました。
変電所→国道20号の小路に桜が植わっております。
近隣の人たちのための植樹と聞きました。
祖父はヴァイオリンが趣味だったようです。
これもなにかの御縁?と思い、思わずコメントいたしました。
これからもお邪魔させていただきたいと存じます。
あ~~びっくり!なんともうれしい驚きでした。

鍵盤屋音夢鈴 拝
Commented by sabasaba13 at 2012-09-27 20:28
 こんばんは、音夢鈴さん。鍵盤屋というと、ピアノ製作がご家業なのでしょうか。斎藤秀雄氏に興味をもたれる方がおられて、たいへん嬉しく思います。拙い書評ですが、ひさしぶりに読み返してみて、あらためて彼の音楽家・教育者としての凄さと志の高さに感じ入りました。
 また八ツ沢発電所の近くに住まわれているとのこと。不思議なご縁ですね。“袖触れ合うも他生の縁”と申しますが、これを機にご愛読いただけると幸甚です。
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