甲斐路編(14):身延山久遠寺(11.5)

 持参した水は底をつき、喉はからから。売店に自動販売機があったので飛びつくと、ミネラル・ウォーター(110円)はすべて売り切れでした。しかし捨てる神あれば拾う神あり、すぐ近くに「身延山」というミネラル・ウォーターを販売している自販機がありました。仏の慈悲に縋るように近づくと…160円!!! なめとんのかこらあ、と自動販売機にローキックを炸裂しようとしましたが、大人気ないし仏罰も怖いし寸止めにしました。極楽の沙汰も金次第ということですね。
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 五重塔、本堂、祖師堂を見物、境内には葉桜となった枝垂れ桜の古木がたくさんありました。これらが満開だと、さぞや美しいでしょうね。
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 そして恒例の絵馬ウォッチング。我執を否定するのが仏教の最も重要な教義だと思いますが、その寺院が欲望の塊・絵馬でひと稼ぎするのは矛盾していませんか、などと固いことを言うのはやめましょう。「漢検・そろばん・英検に受かり、定期テストで十番以内に入れますように…」「パパの会社がもっと大きくなって、成功しますように!!」「社交的になって円滑な人間関係を築けますように」「すてきなおねえさんになれますように」 ♪限りないもの、それは欲望♪ でも"すてきなおねえさん"が増えたらちょっと嬉しいなと思う、しようもない私でした。
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 それでは下界へと降りましょう、三井寿のように膝をこわすと大変なので「菩提梯」は回避し、迂回路の男坂・女坂を下り、「善男」「善女」という表記の上に閻魔(?)と弁財天(?)の小像があるトイレ表示を撮影。
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 そして門前町にある無人のタクシー営業所から電話をしてハイヤーを呼びました。数分後にやってきた車に乗り込み身延駅へ向ってもらいますが、おおそうだ、災い転じて福となす、せっかくタクシーに乗ったのだから、往路で見かけた謎の洋館に寄ってもらいましょう。運転手さんに、身延小学校のあたりにある古い洋館について訊ねると、校舎ではなく旧遠藤病院とのことでした。近くで車を停めてもらい、いそいそと撮影に向いました。うーむ、得も言われぬ圧倒的な存在感ですね。古色にくすんだ下見板、マンソール屋根と切妻屋根が組み合わされた複雑な形状の屋根、コンクリート製の車寄せ。まるでベイツ・モーテルのように、見る人を不安に陥れます。タクシーに戻ると、運転手さんが波高島駅の近くにも古い病院がありますよ、と教示してくれました。さきほど断腸の思いで訪問を断念した旧下山療院ですね、と言うと「お前はいったい何者?」という表情をされました。いやいや、ある時は片目の運転手、ある時はインドの魔術師、そしてたいていは面白怪しい古い建物が大好きな閑人と答えておきましたが。
 そして身延駅に到着、甲府行きの特急ふじかわ7号に乗り込み市川大門へと向かいます。途中に鰍沢口という駅がありましたが、落語『鰍沢』の舞台ですね。
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 身延山参詣の帰り道、大雪で道に迷った旅人が山中の一軒家に泊めてもらいますが、そこに住んでいた美女は実は旅人に毒を飲ませて金品を奪うのを生業としていました。それに気づいて逃げ出す旅人、銃を持って追いかけるお熊、吹雪の中、鰍沢の断崖に追いつめられ絶体絶命となります。「南無妙法蓮華経」と唱え続ける彼。そこへ雪崩が起こり、旅人は谷底へ落ちますが、川につないであった筏につかまり九死に一生を得ます。古典落語なので、落ちを言ってしまいますが、「お題目(材木)で助かった」

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2012-10-08 09:27 | 中部 | Comments(0)
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