山形編(37):鶴岡(11.8)

 さてそろそろ宿からの送迎車が到着する時間です。近代化遺産を拝見しながら、ぶらぶらと歩いて鶴岡駅へ戻ることにしましょう。まずは致道博物館から歩いて十数分のところにある鶴岡カトリック教会天主堂へ。赤いとんがり屋根と白ペンキ塗りの下見板が愛らしい逸品です。竣工は1903(明治36)年、フランス人神父のパピノ設計によるものと伝えられています。内部に入ると、「窓絵」というちょっと異色な窓がありました。聖画を描いた透明な紙を窓ガラスに貼り、その外側からもう一枚の窓ガラスではさむというもの。高価なステンドグラスの代用として考案されたそうですが、日本ではこの教会でしか見ることができないそうです。同じく日本唯一なのが「黒い聖母」像。フランス・ノルマンディー州のデリブランド修道院から寄贈されたそうですが、なぜ肌の色が黒いのか? 同教会のホームページによると、旧約聖書のソロモン雅歌には次のようにあるそうです。"イスラエルの娘たちよ/私はケダルの天幕のように/サルマハの幕屋のように/黒いけれども美しい/私の焦げた色に目をとめるな/私は陽にやけた" なおその隣にある司祭館も瀟洒な洋館でした。
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 内川沿いにすこし歩くと、旧鶴岡町消防組第八部消防ポンプ庫がありました。1920(大正9)年に蒸気消防ポンプ車の車庫として作られたもので、小振りですが堂々としたイギリス積煉瓦造が印象的。公衆便所として余生を送っていますが、私だったら断固として拒否しますね。鶴岡の街並み自体はそれほど風情を感じませんが、ところどころにキッチュな物件があるので救われます。「死ね死ね団」のアジトのような建物には、「菅原イチローヂ商店」と記されていましたが、漢字でどう書くのだろう? 市郎次? 胃遅漏痔? ご教示を乞う。「和装洋装ワタトミ」の三階部分は、ル・コルビジェばりのリボン・ウィンドウになっていました。中でも圧巻は、写真館の「寛明堂」。表現主義風の塔屋、八角形の窓、寄棟の瓦屋根、何の脈絡もなさそうな意匠を強引に破綻なくまとめあげたその力技にはシャッポを脱ぎましょう。それにしても、これまであちこち旅行をしてきましたが、写真館には個性的な物件が多いですね。何故なのでしょう。
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 「砂糖は三友」という看板は、砂糖が貴重品であった時代の名残でしょう。「よぐござったのぉ、鶴岡さ」という看板には、映画「おくりびと」の鶴岡におけるロケ地が紹介されていました。終盤に登場する金沢陸橋、主人公がバスに乗っているシーンで登場する銀座通り、葬儀と干柿を食べるシーンで登場するM邸、外観のみ登場するW邸、度々登場する鶴乃湯は庄内映画村に移築されたという情報を入手しています。
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 そして午後五時半に駅前に到着、依頼した宿からの送迎車が待っていました。かなり遠いのに、無理を言って申し訳ありません。なお手持ちの地図によると、湯野浜温泉に向かう途上で安良町公民館(旧鶴岡警察署大山分署)の前を通り過ぎるようです。宿の方に訊ねると、ビンゴ! おんぶにだっこ、そこで車を停めて写真を撮らせてはもらえないかとお願いすると、快諾してくれました。わりーね、わりーね、ワリーネ・ディートリッヒ。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2013-01-11 06:18 | 東北 | Comments(0)
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