九州編(31):肥薩線(11.9)

 そしていよいよ最後の見どころ、ループ線+スイッチバックへと突入。勾配を緩和するために山を一回りして、スイッチバックのある大畑(おこば)駅へと向かいます。途中で停車してくれた場所では、はるかかなたに大畑駅のスイッチバックを遠望することができました。ここはピンポイントでしか見られないようで、3→2→1号車の順にちょっとずつ移動してくれるという芸の細かさ。
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 そしてゆるゆるとループ線を下り、一回目のスイッチバックをして大畑駅へと到着しました。なぜここにスイッチバックがあるのか? 人吉からこのループ線をのぼる前に補給や休憩のために駅を設ける必要がありましたが、平坦な土地がなかったための苦肉の策のようです。こちらでは六分間の停車、付近の方々が地元物産を持ってお出迎えをしてくれました。1909(明治42)年開業の古い木造駅舎内の壁面には一面に名刺がはりつけてありました。どうやら験担ぎのようですね、見栄えはよろしくありませんが。駅の近くには石造の給水塔、これは大量の水を必要とする蒸気機関車のためですね。人吉駅から大畑駅まで、D51形蒸気機関車で1トンもの石炭を消費し、1分間に250リットルもの水をボイラーに送り続けていたというから半端ではありません。なおこちらのホームにも湧水盆(通称朝顔鉢)が残されていました。「いさぶろう・しんぺい」号とループ&スイッチバックを描いた顔はめ看板を撮影して列車に乗り込み、いざ出発。
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 大畑駅で二回目のスイッチバックを行い、人吉へと一気に下っていきます。そうそう申し遅れましたが、車内にはモニターがあって前方の風景を見ることができました。右の線路がループ線方向、左の線路が人吉方向です。
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 十数分ほど走って球磨川を渡り、人吉駅に到着したのが16:35。人吉をタクシーで散策して、今夜の塒・八代へと向かう予定です。んが、忘れちゃいけない、この人吉駅にも鉄道遺産がてんこ盛り。「もう堪忍してほしいわ」と京極万太郎氏のように嗚咽したくなります。跨線橋を渡って駅の北側に出て、線路に沿って西へ数分歩くと、お目当ての石造りの機関庫が見えてきました。1911 (明治44)年に竣工された縦51m×横16mの威風堂々とした建物で、肥後の石工が残した匠の技が活かされているとのことです。出入口にあるという径間4mの三連アーチを正面から見たかったのですが、いかんせん機関区ということで立入りは禁止、至近距離に近づくことができません。入口のあたりで指をくわえて眺めていれば、駅員さんが「なんばしよっと」と優しい球磨弁で話しかけてくれて、事情を話せば「よかよか」と中に入れてくれるかな、なんて虫の良いことを期待しましたが、もちろん起こりませんでした。すぐ近くには、同年につくられた転車台もあるのでお見逃しなく。「SL人吉」復活により再び動き始めということで慶賀の至り、これからも元気でくるくると廻り続けてください。
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 なお1番ホーム西側(西人吉駅側)の屋根の支柱に「UNION・D・1889 NTK」と刻印された古いレールが使われていることが、今、わかりました。九州鉄道会社の注文によりドイツの「ユニオンドルトムント」社によって1889(明治22)年に製造された歴史的価値のあるレールですが、遅かりし由良之助、見損なってしまいました。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2013-03-02 08:16 | 九州 | Comments(0)
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