九州編(53):蕨野の棚田(11.9)

 朝目覚めてカーテンを開けるとお天道様が微笑んでおられました。テレビをつけて天気情報を見ると、雲が多いもののおおむね晴れという予報。本日は、タクシーを四時間借り切って蕨野の棚田→大浦の棚田→浜野浦の棚田とまわってもらい、玄海原発・名護屋城址・呼子・菜畑遺跡を拝見、午後は自転車を借りて唐津市内を徘徊、そして駅となりのアルピノホールで開かれている唐津焼展をひやかして、福岡空港から飛行機で帰郷する予定です。ホテルで朝食をいただきチェックアウトをし、駅へ向かおうとするとロビーに「呼子町イカまつり」という観光ポスターが貼ってありました。ありゃ今日だ、こりゃまいったなあ、たいへんな混雑が予想されますね。場合によってはタッチ・アンド・ゴーにしましょう。途中に「日本をいちばんの国へ。」というわけのわからない自民党のポスターがありました。いやいや、あなた方のおかげで日本はもうアジアでいちばん危ない国になっていますよ。日常的に放射性物質をまきちらす核(原子力)発電所が林立し、巨大地震におそわれたらそれらが深刻な事故を起こして近隣地域に凄まじい量の放射性物質をばらまいてしまう国。プルトニウムをしこたま溜めこんでいる国。核武装する可能性を十二分にもっている国。ねっ。
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 そして唐津駅に到着、昨晩は暗くてわからなかったのですが、マンホールの蓋には虹の松原が描かれていました。駅前には唐津焼でつくられた曳山・赤獅子の大きなモニュメント。そしてドアの引き手も唐津焼でした。
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 駅のコインロッカーに荷物を預け、ここ唐津には「観タクン」がないことは昨晩確認したので、駅前で客待ちをしているタクシーに乗り込み、四時間貸し切り(一時間3900円)にしていただきました。まず向かっていただいたのは蕨野の棚田。唐津駅から四十分ほど走ると交流広場があり、こちらで「蕨野の棚田 遊歩マップ」という正確な地図をいただけます。
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 まずは見晴らしの良いところへ、地図によると大平展望所があったのでそちらに寄っていただきました。棚田の間を縫うようにのぼり展望所に到着…とはいっても車道の脇にあるちょっとした駐車スペースでした。車からいそいそとおりて見下ろすと、山々の斜面にひろがる棚田を一望することができます。
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 いったいどれくらいの手間ひまや苦労がかかったのだろう、想像するだけで立ち眩みがしてきます。子孫や、自分たちが暮らす地域の末来の世代の幸福を思って、木を伐り土地をならし石を組み水を引いたのでしょう。尊いとすら思えるその行為に頭を垂れましょう。最近読んだ『夢よりも深い覚醒へ』(大澤真幸 岩波新書1356)に次のような一節がありました。
 ところで、あるところで、カントは、一つの「不可解な謎」として、次のようなことを指摘している。人は、しばしば、その成果として得られる幸福を享受できるのがずっと後世の世代であって、自分自身でないことがわかっているような骨の折れる仕事にも、営々と従事する。これは不思議なことではないか、と。確かに、人は、まず自分自身の幸福のために生きているとすると、これは奇妙なことである。しかし、こういう仕事に取り組んでいるとき、人は、自分が生きている間には仕事は完成せず、その「果実」を楽しむのは、自分が死んだ後の者であろうことはよく理解しているが、かといって、自分の本性や自然な欲望に反して、無理やりそうしているわけではない。むしろ、多くの人は、自分がやりたいようにやっているのだが、結果として、専ら後の世代の幸福にしか役立たないことにも熱心に従事するのである。(p.134~5)
 未来の他者へと配慮を向けてしまうのが人間だし、また己の利益のために末来の他者を犠牲にするのも人間なのでしょうね、原発のように。もう一つある五百羅漢展望所にも行って眺望を楽しみ、日本一の高石積みにも寄ってもらいました。ここ蕨野の棚田は土坡の石積みが見事なのですが、これは手間講という共同作業によって農民の手で積まれたそうです。中でも南川原にある石積みは高さ8.5mで日本一高いもの。残念ながら近くには行けませんでしたが、遠目にもその圧倒的な迫力を感じることができました。
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 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2013-04-03 06:20 | 九州 | Comments(0)
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