富士五湖編(1):山中湖(12.5)

 そうだ、富士、行こう。そういえば、富士五湖のうち山中湖しか訪れたことがないなあ。せっかくだから、富士五湖すべてを自転車で一周するというのはどうかしら。忍野八海と天下茶屋をおりまぜて二泊三日で何とかなりそうだなあ。と、とんとん拍子で旅程が決定。心配なのは貸し自転車があるかどうかです。山中湖と河口湖は問題ないとして、西湖は河口湖といっしょに回ればよし。インターネットで調べたところ、精進湖と本栖湖には貸し自転車屋さんがなさそうです。幸いなことに、精進マウントホテルに電話で予約を入れたところ、ホテルの自転車を貸してくださるとのことでした。これで本栖湖もまわれることができます。初日に山中湖、二日目に河口湖・西湖・精進湖・本栖湖を走破、三日目に天下茶屋と忍野八海を訪れることにしましょう。雨が降ったら? うーん、ま、その時はその時。天下無双の晴れ男、己の強運を信じましょう。持参した本は『逝きし世の面影』(渡辺京二 平凡社ライブラリー)です。

 2012年の皐月好日、いよいよ出立ですが、天気予報によると本日は曇り、明日は曇り時々雨、明後日は曇り時々晴れ。ふう、いよいよ運も尽きたか。ま、しようがない、ニンドスハッカッカ、マ、ヒジリキホッキョッキョと呪文を唱えて気象庁にひと泡ふかせてやりましょう。新宿の高速バスターミナル13:10発のバスに乗り、山中湖の旭日丘バスターミナルに15:24到着です。コインロッカーに荷物を預け、係の方に訊ねると、道路をはさんで向かい側にある某会社のオフィスで借りられることが判明。さっそく訪ねて自転車を拝借。まずはすぐ近くにある船着き場から、遊覧船「白鳥の湖」に乗りました。最近リニューアルしたばかりの頭に宝冠をいただく巨大な白鳥型の新鋭船、アラフィのおっさんが乗るにはちょっと赤面ものですが、ま、いいや、旅の恥はかき捨て。35分ほどで湖面を周遊します。予報どおり天気は曇りですが、富士の姿はかろうじて薄雲の中に浮かび上がっていました。山中湖名物、ワカサギ釣りの屋形船がぷかぷかと浮かんでいます。船内は木目を生かした暖かい雰囲気で、双眼鏡や子供用の操舵付き展望台などいたれりつくせりのサービスでした。
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 それでは自転車にまたがり、山中湖を一周することにしましょう。期待していた逆さ富士はまったく見えませんでしたが、清涼な空気を吸いながらサイクリングを楽しめただけで諒としましょう。テニスコートがたくさんある平野のあたりを走り抜けたのですが、情けないことにこの時には気づきませんでした。そう、わが畏敬する詩人・金子光晴が疎開していたのがここだったのですね。私の大好きな『富士』も、ここで書かれたのでしょう。
重箱のやうに
狭つくるしいこの日本。

すみからすみまでみみつちく
俺達は数へあげられてゐるのだ。

そして、失礼千万にも
俺達を召集しやがるんだ。

戸籍簿よ。早く燃えてしまへ。
誰も。俺の息子をおぼえてるな。

息子よ。
この手のひらにもみこまれてゐろ。

父と母とは、裾野の宿で
一晩ぢゅう、そのことを話した。

裾野の枯れ林をぬらして
小枝をピシピシ折るやうな音を立てて
夜どほし、雨がふってゐた。

息子よ。ずぶぬれになつたお前が
重たい銃を曳きずりながら、喘ぎながら
自失したやうにあるいてゐる。それはどこだ?

どこだかわからない。が、そのお前を
父と母とがあてどなくさがしに出る
そんな夢ばかりのいやな一夜が
長い、不安な夜がやつと明ける。

雨はやんでゐる。
息子のゐないうつろな空に
なんだ。糞面白くもない
あらひざらした浴衣のやうな
富士。
 世の親たちに、ふたたびこういう思いをさせようと、舌なめずりをしている御仁を首相に選んでしまうのですから、その"イグノランスの深淵は計りがたい"ものがあります。これは何としてでも再訪しなければ。山中湖文学の森公園で訊ねれば、彼がどこに住んでいたのかはわかるかもしれません。

 本日の三枚です。悔しいので、以前に山中湖で撮影した写真も載せておきます。
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by sabasaba13 | 2013-09-15 06:19 | 中部 | Comments(0)
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