それでは、金子光晴曰く"額ぶち風な河口湖"めぐりに出発。さて、肝心の富士ですが、薄曇りの中、かろうじて視認することができます。途中で富士を象ったガードレールを見かけました。大石公園は逆さ富士が見えるビュー・ポイントですが、三脚をセットして待つカメラマンも手持無沙汰のようです。
一時間ほどで河口湖を半周、西端から西湖へと向かいますが途中からかなりきつい上り坂となりました。満を持して電動自転車のスイッチをオン、すいすいすいとのぼっていきましたが後一息のところでもうバッテリー切れ。まあこれは想定内、自転車からおりて押すことにしましょう。十数分で西湖の東岸に到着、河口湖とはうってかわって静謐な雰囲気です。金子光晴曰く"嫉みふかそうな、秘めやかな西湖"。湖に沿って北岸の道をひた走ると十数分で西岸に到着、ここからの富士の眺めも素晴らしいですね…晴れていれば。手前の鬱蒼とした森林が青木ヶ原樹海でしょうか。
そして南側は樹海の間を抜けていく道です。自転車をとめてちょっと樹海の中に入ってみましたが、人間を峻拒するように密生する木々に恐れをなしてすぐに退散。途中には「西湖蝙蝠穴」もありました。
そして再び湖岸に沿った道となり、周囲の山々を映す鏡のような湖面をパノラマで撮影。
ラジコンの水上飛行機を操作して楽しむ方々もいました。
下り坂を河口湖へと一気におり、南岸の道を走って四十分ほどでロイヤルホテルに到着。丁重にお礼を言って自転車を返却し、徒歩でカチカチ山ロープウェイへと向かいました。終着の天上山展望台は、河口湖の全景や、富士山の裾野まで見渡せる絶景のビュー・ポイントだそうです。今日の天気では望み薄ですが、だめでもともと、上ってみることにしました。なお太宰治の小説「カチカチ山」(「お伽草紙」収録)の冒頭に"これは甲州、富士五湖の一つの河口湖畔、いまの船津の裏山あたりで行はれた事件であるといふ"とあるところから、カチカチ山ロープウェイと名付けられたそうです。
3分ほどで天上山=カチカチ山山頂に到着、標高1,075メートルの展望台からはかろうじて河口湖の全景が見えますが、富士は薄雲の中、おまけに小雨まで降り始めました。視界がクリアだったら素晴らしい景観でしょうね、再訪を期したいと思います。麓へおりる途中に太宰の文学碑があるということなので、歩いて下山することにしました。おっあったあった。「カチカチ山」の最後で、溺れる狸が兎に投げかける哀切きわまりない言葉、「惚れたが悪いか」と刻んであります。天気が良ければ背後に富嶽を眺めることができるのですが、狸の涙雨でしょうか。
本日の三枚、上の二枚が河口湖、下の一枚が西湖です。