富士五湖編(7):本栖湖(12.5)

 さて精進湖から三十分ほどで、金子光晴曰く"無の湖"、本栖湖に到着、湖を一周する道路があるので周囲約13kmを走破しましょう。相も変わらずの曇天、小雨が降ったりやんだりの悪天候ですが、今さら後には引けません。それでも、河口湖・山中湖のような「金落とせ」的な騒々しさもなく、新緑を愛でながら気持のよいサイクリングができました。
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 しばらくペダルをこいでいると、千円札・旧五千円札の富士山撮影ポイントに到着。しかし裾野がぼんやりと視認できるだけでした。ちなみにもとになった写真は、本栖湖から眺める富士をこよなく愛した写真家・故岡田紅陽氏が撮影したものだということでした。
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 近くには"ゴミを捨てるような人には、来ていただきたくありません""ゴミが「いっしょに帰りたいと泣いています"という観光協会の注意書きがありましたが、ラジャー、捨てるようなゴミの持ち合わせはありませんが気をつけます。
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 しばらく走ると、タイガーロープに「渡河訓練実施中 入らないで下さい」という札がぶらさがっていました。なるほど、湖畔では自衛隊の方々が架橋訓練をされていました。すこし走ると今度は「教育支援施設隊宿営地」という看板があり、多くの軍用トラックやテントがありました。
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 自衛隊のことはよくわからないので、インターネットで調べてみると、教育支援施設隊とはいわゆる「工兵」を指すようです。通常の道路、橋梁補修や陣地の構築、はたまた地雷原の埋設から、撤去、橋のない河川への架橋や戦闘工兵として最前線にて進撃通路の啓開までをこなすそうです。3・11の東日本大震災の際には、救助活動等に大いに尽力されたとのこと。心より感謝いたします。しかし、いっそのこと、その災害救助に特化してはどうかとい私は考えております。詳細については、拙ブログの国営国際救助隊「雷鳥」を参照してくだされば幸甚です。あまり報道されてはいない(意図的に?)のですが、自衛隊における自殺・いじめ・体罰・ノイローゼの蔓延という深刻な事態を少しでも改善するためにも必要なことだと思います。それに関して、「すくらむ」という、国家公務員一般労働組合のブログに、たいへん興味深い記事がありましたので、私の文責で要約して紹介します。詳細についてはこちらをご覧ください。
 『東京新聞』(2012.9.27)によると、2003年に始まったイラク戦争で、中東へ部隊派遣された自衛官のうち、先月までに25人が帰国後に自殺していたことが防衛省への取材で分かりました。自衛隊全体の2011年度の自殺者は78人で、自殺率を示す10万人あたり換算で34.2人。イラク特措法で派遣され、帰国後に自殺した隊員を10万人あたりに置き換えると陸自は345.5人で自衛隊全体の10倍、空自は166.7人で5倍になります。一般公務員の1.5倍とただでさえ自殺者が多い自衛隊にあっても極めて高率です。
 イラクから帰還した陸上自衛隊員の自殺率345.5というのは、2011年の日本全体の自殺率24.0と比べると、14.39倍もの高率となる驚くべき数字になっているのです。それは何故か? ジャーナリストの三宅勝久さんは以下のように話されています。以下、引用です。
 私は自衛隊員の自殺問題を取材する中で、自衛隊の現場では人権を無視した残酷ないじめや暴力事件が蔓延していることを知りました。私が自衛隊の取材を始めたきっかけはサラ金の取材でした。今から5年前、私がサラ金問題を取材していたとき、サラ金の多重債務に苦しむ自衛隊員のあまりの多さに驚いたことが自衛隊員の問題を取材するきっかけになったのです。
 国から衣食住が保障されている自衛隊員がなぜサラ金で借金を重ねるのか? 疑問に思った私が取材を進めると今度は自衛隊員の自殺が多いことに気づきました。
 1994年から2008年までの15年間で、1,162人もの自衛隊員が自殺しています。また、2007年度の数字を見ると、暴力事件での懲戒処分80人。わいせつ事件での懲戒処分60人。脱走による免職326人、そのうち半年以上も行方が分からず免職になった自衛隊員は7人。病気で休職している自衛隊員は500人にのぼっています。
 私は『自衛隊という密室――いじめと暴力、腐敗の現場から』(高文研)という書籍の中で紹介しましたが、取材を進める中で自衛隊というのは「暴力の闇」の中にあると感じています。男性の自衛隊員から殴打も含む虐待を受け、声を出すこともできなくなり自殺に追い込まれた女性自衛隊員。異動のはなむけとして15人を相手に格闘訓練と称したリンチを受け亡くなった自衛隊員。先輩の暴行を受け左目を失明した自衛隊員。自衛隊員の自殺の原因に、日常的な上官らのいじめがあったとして遺族が提訴しているケース。守るべき一般市民を自衛隊員が襲った連続強姦事件。上司からセクハラされた上に退職強要を受けた女性自衛官の裁判闘争。自衛隊員へのアンケート結果によると、女性隊員のうち18.7%が性的関係の強要を受け、強姦・暴行および未遂は7.4%にものぼり、自衛隊全体で700人以上が強姦・暴行および未遂の被害を受けているのです。
 また、制服幹部一佐の年収は1,000万円以上、退職金は4,000万円。そして納入業者に役員待遇で再就職。防衛省との契約高15社に在籍しているOBは2006年4月に475人もいて、三菱電機98人、三菱重工62人、日立製作所59人、川崎重工49人などとなっています。2008年度の1年間で、防衛省と取引のある企業に再就職した制服幹部一佐以上は80人。三菱重工と防衛省との年間契約高は2,700億円にのぼっているのです。
 こうしたいじめ、暴力、汚職などが蔓延する職場が自衛隊という密室なのです。そうした職場のストレスから酒やギャンブル、女遊びにはまって借金を作り、身動きがとれなくなる人は後を絶たず、自殺者も続出しているのです。
 なぜ自衛隊という職場にはこれほどのストレスがあるのか。一般論として、まずそれが軍隊という、人を殺すための組織だからでしょう。甘粕正彦曰く、"軍人というものは、人殺しが専門なのです。人を殺すのは、異常な心理状態でなければできないことです。一種の気ちがいです" [『甘粕正彦 乱心の曠野』(佐野眞一 新潮文庫)より] 沖縄のある新聞記者曰く、"だいたい人権意識の強い兵隊って使い物にならないでしょ" [『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 〈下〉』(佐野眞一 集英社文庫)より] 元海兵隊員のアレク・ネルソン曰く、"ベトナムの実際の戦闘では、上官から、殺したベトコンの耳を切り取って、それを勲章として首飾りにしろと教えられました。沖縄に帰れば、女でも酒でも楽しめる、暴行しても逮捕されないとも言われました。こういう洗脳教育で正常な人間の感覚が麻痺していくのです…" [『沖縄に基地はいらない』(岩波ブックレット)より] 洗脳教育によって、正常な人間としての感覚や人権意識を麻痺させ、異常な心理状態に追い込む。
 さらにこれに旧日本軍の伝統をひきずるという独自の事情が加わります。藤原彰氏は、『餓死した英霊たち』(青木書店)の中で次のように述べられています。もともと陸軍が範としたヨーロッパ大陸国の徴兵制の軍隊は、国家によって解放された独立自営の農民=国民の存在を前提としており、自らの財産を守るために戦うという自発的な戦闘意識や愛国心を期待することができました。ところが日本では、守るべき財産のない貧しい小作農が兵士の中心であったため、それらを期待できません。そこで兵士にたいしては、厳しい規律と過酷な懲罰をもって、上級者にたいする絶対的・機械的な服従を強制したのですね。それは同時に、下級者である兵士の人権を著しく侵害することにもなりました。上級への絶対服従、苛酷な規律と懲罰、人権意識の欠如、そういった旧日本軍の病弊がそのまま自衛隊にも脈々と受け継がれているのではないでしょうか。先述の記事によると、2007年度の一年間で、海上幕僚長の行った20回の訓示の中には、「帝国海軍」「海軍兵学校」などという「旧海軍」を讃える発言が15回もあったそうです。
 というわけで、自発的に人を殺せる兵士を育てる組織であるかぎり、この悪弊は払拭できないでしょう。自衛隊から国営国際救助隊「雷鳥」へと転身すれば、それをなくすことができると思います。また世界中の国から掛け値なし/無条件の賞賛と敬意を得ることができ、救助隊員として働くことにやりがいも生まれ、誇りと自信をもって任務に励めるでしょう。隊内における自殺やノイローゼや非公式のいじめ/いやがらせも劇的に減ると思います。また汚職の温床をつくっている軍需企業の糧秣を絶つことができ、汚職も劇的に減少するでしょう。良いアイデアだと思うんですが、いかがですか安倍伍長。
 なおこの問題とオウム真理教の問題には通底するものがあるのではないでしょうか。それは、日本社会において、個人の尊厳や人権が蔑ろにされているということ。昨今、学校でのいじめや体罰が問題・話題になっていますが、学校は社会の縮図です。日本社会全体にいじめ・体罰=人権や尊厳の軽視が蔓延っているかぎり、学校の内部だけでそれらを根絶させることなど無理というもの。穿った見方をすると、学校でのいじめ・体罰をセンセーショナルに取り上げることによって、日本社会の人権軽視を隠蔽しようとしているのではないでしょうか。メディアの皆様方、自衛隊や企業におけるいじめ・体罰も同時に報道しなければ、それは片手落ちというのものです。
by sabasaba13 | 2013-09-26 06:18 | 中部 | Comments(0)
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