尾瀬編(4):竜宮十字路(12.6)

 大きな池塘の先で振り返ると、至仏山と木道を一列に歩くハイカーたちを見事に映していました。湿原に咲く一輪の清楚なピンクの花を撮影、いま調べたところ、イワカガミのようです。さて、ガイドブックに載っていた「尾瀬を代表するビューポイント」が近づいてきました。おっ左前方に、カメラを構えた人だかりができています、どうやらあそこのようですね。下ノ大堀の畔へと迂回する木道を進むと…素晴らしい。残雪をかぶる至仏山、それをほのかに映す清らかな下ノ大堀、一面に咲き誇る水芭蕉、もう言うことはなし。みなさんと共に写真を撮りまくりました。
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 そして再び本道へ、このあたりでは前方に燧ヶ岳を、後方に至仏山を手に取るように眺めることができます。体を180度回転させて、強引にパノラマ写真におさめました。
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 足元に咲く黄色い可憐な花は、リュウキンカでしょうか。そして竜宮十字路に到着、牛首分岐から一時間ほどかかりました。左へ向かうとヨッピ橋、右へ向かうと富士見峠、真っ直ぐ進めば見晴です。
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 近くにある竜宮小屋でトイレを拝借し、十字路にあるベンチで旅行者から配給された「尾瀬名物 舞茸おにぎり弁当」をいただくことにしましょう。こんな素敵な風景の中で食べると、なんてことはないおにぎりも王様のブランチと化します。足元には、タテヤマリンドウが侍女のように傅いていました。ここからヨッピ橋に向かい、東電小屋で荷物を預かってもらうことにしましょう。右手には林が見えてきますが、沼尻川に沿って生えている拠水林だそうです。やはり白樺というのは絵になる木ですね。
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 余計なことですが、白樺は燃えつきはいいがすぐに火勢が弱くなる"やくざな"木だと、『ロビンソンの末裔』(開高建 角川文庫)に書いてありました。(p.148) 一時間弱で三叉路に到着、右に曲がってヨッピ橋を渡り、東電小屋へと向かいます。燧ヶ岳に向かって気持よく歩いていると、木道の脇に鐘が吊るされていました。もしや…熊? 「ご通行の皆様へ 熊と出会わないために、人が通ることを知らせてあげましょう。(鐘を鳴らしてください)」と記してありました。
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 険呑険呑、実は私、熊は嫌いではないのですが、道でばったり出会うのは御免蒙りたいと常日頃思っております。さて、音を出せば熊は逃げてくれるのか、以前にも書いたのですが、熊は音に驚くというよりも、人の姿を見れば普通は逃げるほど臆病な生き物です。しかし人馴れした熊は、音も人間の気配も関係なし。よって人馴れした熊には出会わないことを祈るしかない、というのが現在の心境です。桑原桑原。なお『ロビンソンの末裔』(開高建 角川文庫)に、次のような叙述がありました。ほんとに怖いですね。
 ところが、畳屋は秋もおそくなってから山のなかで仲間といっしょにはたらいているとき、熊に出会った。仕事に夢中になっていたのでわからなかったのだが、仲間がとつぜん声をあげて走りだしたのでふりかえると、まっ黒のかたまりがもくもく肩をゆすって迫ってくる。なにもかも投げだして走ったところ、たそがれどきだったので方向を失い、崖ぎわの笹むらに追いつめられてしまった。ハッと思ったとたんに足がすべってたおれたが、二足か三足ぐらいおくれたところで熊は畳屋の仲間に追いつき、おそいかかった。畳屋は仲間がすさまじい悲鳴をあげるのを聞いたけれど、おそろしくて、ただもう草むらのなかでじっとしているよりほかなかった。熊は仲間をたおすと、やがてそれを食いだした。暗いのでよくわからないけれど、畳屋はつい鼻のさきで大きな舌の鳴るのとあえぐ息の音を聞き、バリバリッと骨の噛みくだかれるのを聞いた。ということでした。
 「…おやじのやつはな、それでわかったんだが、人間は腹から食いにかかるもんなんだ。やわらかくて、臓腑があるからだろうな。…焼夷弾でやられたり電車にひかれたりしたやつの体は見たことあるが、熊に食われたやつの体ってのはまた格別のおもむきだね。腹のなかが踏みちゃちゃくにされて泥だらけになっちまってね…」 (p.202~4)

 本日の五枚です。
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by sabasaba13 | 2013-10-11 06:21 | 関東 | Comments(0)
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