尾瀬編(7):見晴(12.6)

 朝の五時に目覚め、恐る恐る外へ出てみると…おおっ雨はあがっていました。薄い雲が天空をおおっていますが、ほのかに青空になりそうな気配も感じます。さすがは天下無双の晴れ男、と自分を褒め称え、小屋の前に広がる湿原をしばし散策しました。心身に積り積った憂き世の塵埃を洗い流してくれる清冽な空気を浴び、木道を歩いていくと、朝靄の中に至仏山が浮かび上がっています。清楚に並び立つ白樺、湿原には白と黄色の見事な二重奏を歌う水芭蕉とリュウキンカ。
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 小屋に戻ると朝を切り裂く燕たち、軒下の巣にいる雛たちに間断なく餌を運んでいました。この光景を見ると、いつも"のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳ねの母は死にたまふなり"という斎藤茂吉の歌を思い出します。燕は水たまりにも群れ集い、餌をさがしたり水を呑んだりしていました。
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 さて、朝食は六時半ということなので食堂に行ってみるともう満席で、かなり待たされるはめになりました。山小屋とはあまり縁のない衆生ですので、度し難いと言われたら返す言葉もないのですが、もうすこしhospitalityがあってもいいのでは。いくつかのグループに分け、時間を指定してくれたら助かるのですが。
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 部屋に戻って荷物をまとめ、いざ尾瀬沼に向かって出立です。フロントで宿代を支払って注文しておいた弁当を受け取り、外へ出るとさきほどより青空が広がっています。もう一度、さきほどの湿原に行きパノラマ写真を撮影。
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 時刻は午前七時すこし過ぎ、まずは東電小屋分岐をめざしましょう。東京電力が設置してくれている木道の一部が朽ちつつあるのが気になります。予算が不足しているため、人通りの少ない所の補修は後回しということでしょうか。分岐を右に曲がり、しばらく歩くと見晴に到着、東電小屋から一時間弱かかりました。
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 ここでトイレ休憩をとって尾瀬沼へと向かいます。すこし奥まったところにあった簡易トイレに入ったのですが、その汚さは筆舌に尽くし難いもの、写真に撮る勇気もわきませんでした。尾籠な話で恐縮ですが、凄まじいトイレを思い起こせば、大学生の時に奈良から柳生へ向かう途中にあった公衆トイレ、石垣島にあった天井一面に上腕部ほどのヤモリがへばりついていたトイレなどがありました。しかし上には上があるもので、最近読んだ『堕落論・日本文化私観』(坂口安吾 岩波文庫)に、かつて京都に恐るべきトイレがあったことが書かれていました。"嵐山劇場は常に客席の便所に小便が溢れ、臭気芬々たるものがあるのである。我々は用をたすに先立って、被害の最小の位置を選定するに一苦労しなければならない。小便の海を渉り歩いて小便壺まで辿りつかねばならないような時もあった" (p.117) まいった。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2013-10-14 08:17 | 関東 | Comments(0)
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