イタリア編(29):メディチ家礼拝堂(12.8)

 そして石段をおり、洗礼堂へと向かいました。その優美な佇まいは、まるでデコレーションケーキのようです。その姿は丸いドームを乗せた円形、藤森照信氏が指摘されたように、初期キリスト教が中近東の乾燥地帯を流浪する教団にすぎなかったころ、テントの中で洗礼を行なった名残りなのかもしれません。中央には洗礼槽、そして二階へあがるとドゥオーモを正面から眺めることができますが、窓ガラスに細かい金網が貼ってあります。『地球の歩き方』によると、写真を撮りやすいように金網の一部分だけ切り抜いてあるとか…ああすぐわかりました、その前で行列ができています。さっそく並んでその空間からドゥオーモを撮影、その後ろに斜塔の天辺も見えるビューポイントでした。
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 さてそれではフィレンツェへと戻りますか。ガイドブックで紹介されていた美味しいジェラートのお店、「デ・コルテッリ(De' Cortelli)」と「オルソビアンコ(Orsobianco)」に思いっきり後ろ髪を引かれましたが、フィレンツェで見たい物件が多々あるので断念。ピサ中央駅へと向かうバスに乗り込みました。駅の手前なのに運転手のアナウンスを聞きまちがえたのか、多くの乗客がおりようとします。すると乗り合わせていた地元の方が「ここは駅ではない!」と怒号。蜂の巣をつついたように騒ぎだしあわてふためく乗客、あわてた運転手がこちらの振り向き「駅ではない!」と怒号。安堵したようにおりるのをやめる皆さん。ちょっと日本では見かけない光景ですね。小学校で、将来アメリカ企業の下働きができるように米語を必修化するよりも、"大事なことは大声で叫ぶ"と教えた方が、よほど子どもたちのためになるのにね。官僚や政治家や財界の皆さんにとっては厄介かもしれませんが。駅に着いて列車を待つ間に、山ノ神とAさんはコーヒーブレイク、私はホームで一服。そして入線してきた列車に乗り込みました。車窓から風景を眺めていると、大理石の石切り場らしきところを発見。そういえば大理石で有名なカッラーラはトスカーナ州でしたね。フィレンツェ近くにあったビルの電光掲示を見ると気温は37度。でも湿度が少ないのでそれほど苦にはなりません。
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 そして午後三時頃、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅に到着。まずは駅の近くにあるサンタ・マリア・ノヴェッラ教会へと向かいました。色大理石が彩るファッチャータ(建物前面)が印象的な、フィレンツェ・ゴシック建築の代表作です。どういうわけか内部は撮影禁止、ジョットの『十字架像』やマザッチョの『三位一体』を網膜に焼きつけました。後者は、ヴァザーリが、それまで"足の爪先で浮いていたような人間が、ここではじめてしっかりと大地の上に立つようになった"と評した作品ですね。
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 近くにあった小さなスーパーマーケットでミネラルウォーターを仕入れて、メディチ家礼拝堂へと参りましょう。サン・ロレンツォ教会の裏手に接続して建てられている、メディチ家歴代当主の墓所です。
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 まずは「君主の礼拝堂」へ、その豪華絢爛かつ巨大な空間には圧倒されました。なお残念ながらこちらも写真撮影は禁止です。新聖具室はミケランジェロ設計による小さな霊廟で、ロレンツォ・デ・メディチと、彼の弟でパッツィ家によって殺害されたジュリアーノ・デ・メディチの墓碑があります。それを飾る彫刻もミケランジェロ作で、前者が『夕暮(Crepuscolo)』『曙(Aurora)』、後者が『昼(Giorno)』『夜(Notte)』です。『夜』には、碑銘として次のようなミケランジェロの詩が刻まれています。
眠りは甘し、石と成らばさらによし
破壊と屈辱の続く間は
見えぬこそ、聞こえぬこそ幸いなれ。
されば我が眠りを覚ますな、
ああ、声ひそめて語れ!
 ミケランジェロ・ブオナローティはフィレンツェの生まれで、この祖国を愛し、その自由と独立を誇りにしており、祖国のための戦争にも加わりました。しかしローマ法王から攻められて敗れ、同志たちの多くは死刑にされたり、追放されたりしてします。しかしミケランジェロの隠れ家にやってきた教皇の使いは、逮捕状の代りに、敬愛の情に溢れたクレメンスの手紙を届け、彼をローマに招聘したのです。芸術家であるゆえに助命されて、フィレンツェを裏切り、敵のもとで働くことになったミケランジェロ。その慟哭とも言える詩ですね。

 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2013-12-13 06:25 | 海外 | Comments(0)
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