靖国神社編(3):(05.5)

 外に出ると、軍用馬、軍用犬、軍用鳩をそれぞれ顕彰した慰霊碑が三つ並んでいます。
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 右手の図書館「靖國偕行文庫」の前を奥に進むと招魂斎庭跡、相撲場、行雲亭・靖泉亭・洗心亭という三つの茶室、そして復元された神池庭園があります。自然のままではなく、人為的に構成された滝石組のある池泉回遊式庭園ですが、水のあまりの汚さには驚きました。故障している鯉の餌自動販売機を横目に、本殿の後ろ側を左へ左へぐるっと回り、拝殿に戻ってきます。途中に「守護憲兵の碑」がありました。「昭和二十年三月十日の東京大空襲の戦火が靖國の神域を襲うが神殿を挺身護持したのも憲兵であった」という由来書があります。付近の住民は救助しなかったのかな。「憲兵の任務は監軍護法に存したが、大東亜戦争中は更に占領地の行政に、或は現地民族の独立指導に至誠を尽した。」という言葉が印象深いですね。そして否応なく目につくのが、樹木に下がっているプレート類です。部隊ごとに樹木を寄進しているのですね。これを見つけたかつての仲間が連絡を取れるように、連絡先が記入されているケースが多いですね。今でも深い精神的紐帯をもって集っていることがよくわかります。「もっこく」の木が多いのには何か謂れがあるのでしょうか。ご教示を乞う。なお後日知ったのですが、境内の片隅に1965年につくられた「鎮霊社」があるそうです。パンフレットによると「本殿に祀られていない方々の御霊と、世界各国すべての戦死者や戦争で亡くなられた方々の霊が祀られています。」とのこと。しかし案内も解説もなく、気づかずに見過ごしてしまいました。重要視されている施設ではないことは明らかですね。
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 というわけで、二時間ほどの散策でした。(無理な話かもしれませんが)先入観なしで印象を一言で言うと、ここは間違いなく神社=宗教施設であるということです。神社を構成する施設はみな揃っています。しかもきわめて歴史が浅くかつ人工的・作為的・政治的につくられた神社だと感じました。普通、神社には、信仰心が薄い小生でも思わず畏敬の念を感じるようなオーラがただよう一帯や物件があります。巨木・奇木・巨岩・奇岩や、清浄な池や川ですね。それが全くありません。伝統的な神道とは、人間の力を超えたマジカルな存在である神がいっぱいいて、大きい物や変わった形の物やきれいな形の物[ex.山・木・岩…]である依代にのりうつるという民間信仰だと考えます。そして、この列島の神々は汚いものが大っ嫌いなので、徹底的にきれいにすると神々は大喜びして恵みをもたらしてくれる。ここから中を汚すなよ、という目印が注連縄(しめなわ)です。目に見えない汚れ[…ケガレ]も落とさなければなりません。そのために行なう儀式が祓(はらい)で、特に有効なのが水ですべての汚れを流し落とす禊(みそぎ)です。そう考えると、神の宿りそうな依代もなく、池も汚れているこの神社は、伝統的神道とは断絶したものだと判断します。そして天皇・政府の命によって死んだ死者のみを顕彰する施設であるということ。追悼、鎮魂、慰霊といった行為と、顕彰という行為は両立しうると思いますが、遊就館の展示から判断しても後者の要素は強いですね。そしてこの神社を心のよりどころとしている戦友や遺族が、間違いなく存在しているということ。寄進された樹木や記念写真、催し物のお知らせなどを見ると、それをひしひしと感じます。
 百聞は一見に如かず。やはり一度は行って視ていろいろなことを感じる価値はあると思いますよ。よしっ、それでは「靖国問題」(高橋哲哉 ちくま新書532)を読んでみることにしよう。
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by sabasaba13 | 2005-06-26 07:45 | 東京 | Comments(0)
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