越後編(5):尖閣湾(13.3)

 さらに南下していくと、壁のない長屋のような建物がありましたが、運転手さんの説明によると子牛の市場だそうです。そして「夕鶴のふるさと」という石碑に到着。
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 木下順二の名作劇『夕鶴』の原話は、ここ北片辺に住む道下ヒメ(当時七二歳)の話したもので、1936(昭和11)年に柳田国男の指導で、鈴木棠三が採集(『佐渡島昔話集』)したものだそうです。実際の舞台では見たことがありませんが、原作は読んだことがあります。帰郷後、ひさしぶりに読み直してみましたが、市場原理主義によって搾取される自然を寓意しているようで身につまされる思いです。つうの独白に耳を傾けてみませんか、安倍伍長。(『夕鶴・彦市ばなし』 偕成社文庫)
 これなんだわ。みんなこれのためなんだわ。…おかね…おかね…あたしはただ美しい布を見てみたいたくて…それを見てよろこんでくれるのがうれしくて…ただそれだけのために身をほそらせて織ってあげたのに…もういまは…ほかにあんたをひきとめる手だてはなくなってしまった。…布を織っておかねを…そうしなければ…そうしなければあんたはもうあたしのそばにいてくれないのね? (p.40)
 と言っても、お金儲けに専心し、アメリカに屈従し、排外的ナショナリズムを煽りたてることしか考えていない御仁ですから無理かな。なおこの碑の両側には、『夕鶴』冒頭の"わらべ唄"を刻んだ碑と、夕鶴と原話鶴女房の関係を記した碑がありました。
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 すこし走ると平根崎に到着、気をつけながら岩場をおりていくと、岩々にいくつもの小さな穴が穿たれています。これが波蝕甌穴(はしょくおうけつ)群、波打際の岩盤に激しい波浪と渦巻きが作用すると、岩盤の表面が浸蝕されて小さな窪みが生じ、そこに小石などが落ち込んで研磨してできた窪み(甌穴)です。どれくらいの時間がかかったのだろう、大自然の営みには頭がさがります。
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 そして尖閣湾へ、絶壁や巨岩・奇岩を有する五つの小湾の総称で、世界一の峡尖美として名高いノルウェーのハルダンゲル峡尖に勝るとも劣らないことから、その名を直訳して名付けられたそうです。遊覧船や海中透視船に乗る時間がないので、一番見晴らしのよいところに連れていってもらって写真を撮影。うーん、ま、雄大な眺めではあるのですが、アイルランドにあるモハーの断崖や、同国イニシュモア島にあるドン・エンガスに比べると少々見劣りがします。日本国内では、隠岐の摩天崖に軍配があがるかな。
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 本日の四枚、「夕鶴」の碑、平根崎、尖閣湾(二枚)です。
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by sabasaba13 | 2014-06-03 06:37 | 中部 | Comments(0)
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