オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)

 この教会は、1905~07年にかけて、精神病院付属の教会として建てられました。当初設計は別の建築家に依頼されていましたが、当時の行政区だったニーダーエステライッヒ州の議員でもあり、既に有名な建築家でもあったオットー・ヴァーグナーが押し切って担当に決定。いくら彼が有名とはいえ、斬新過ぎるユーゲントシュティル様式の教会を街中に建てられないご時世だったため、このような町から離れた立地しか選択肢がなかったようです。なお竣工式には当時の皇帝フランツ・ヨーゼフが、落成式には皇太子フランツ・フェルディナンド(後にサラエボ事件で暗殺)が参列したそうです。
 それではじっくりと拝見することにいたしましょう。まずは外観から。立方体の箱に金色のドームを乗せたシンプルな意匠で、壁面は郵便貯金局のように石板で覆われ、銅のボルトで留められています。入り口の上部に立つ、印象的な四人の天使たちは、シムコヴィッツ(Orhmar Schimkowitz)作です。ちょっと朝香宮邸(東京都庭園美術館)のステンドグラスを思い起こさせますね。二つの鐘楼の上に鎮座されているのは、ニーダーエステライッヒ州の守護聖人聖レオポルドと聖セヴェリンの像だそうです。
オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)_c0051620_6314382.jpg

 それでは内部へと入りましょう。そこは過剰な装飾を排した純白の世界、身も心も引き締まりますがどことなく温かさも感じます。
オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)_c0051620_6326100.jpg

 ベンチの間をしずしずと歩み、教会奥にある大祭壇の前へ。天使をあしらった見事な金色のドームは、ヴァーグナーの設計に基づきシムコヴィッツによって作られたそうです。背後にある大祭壇画は大きなモザイク画で、キリストを中心とした天国の様子が描かれています。両側に一歩前に出ているのがマリアとヨセフ。右側にはアシジの聖フランシスコ、聖クリストフォロスなど、左側には精神病患者の守護聖人などが描かれているそうです。絵の外右側には鍵を持った聖ペトロが立っていますが、この顔は皇帝フランツ・ヨーゼフに似せたとのこと。荘厳さと軽やかさをうまく醸し出す意匠です。なお普通ならば大祭壇は東の方向に置かれるそうです。東はキリスト教の聖地、エルサレムの方向で、大祭壇に向かって祈りを捧げると自然と聖地エルサレムの方向に向くことになるのですね。しかしこの教会の大祭壇は北側に作られています。これは精神を病んでいる人々が大祭壇の正面に立った際、逆光に向かわなくても済むようにとの意図から光のささない北側に大祭壇が置かれたためだそうです。

 本日の三枚です。
オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)_c0051620_6323298.jpg

オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)_c0051620_6325235.jpg

オーストリア編(25):アム・シュタインホーフ教会(13.8)_c0051620_6331142.jpg

by sabasaba13 | 2014-10-07 06:35 | 海外 | Comments(0)
<< オーストリア編(26):アム・... オーストリア編(24):クンス... >>