オーストリア編(37):ザンクト・フローリアン修道院(13.8)

 中庭に入ると、握手をしているブルックナーとブラームスの影絵オブジェがありました。同時代人である両者の関係はどうだったのか、気になったのでインターネットで調べてみると、互いの作品を酷評していたそうですね。1889年10月25日、のことだった。ブラームスが常連だったウィーンのレストラン「赤いはりねずみ亭(Zum Roten Igel)」で食事をとった二人、気まずい沈黙の後、メニューを見たブラームスが「あ、私はこれが好物なんだ」と言うと、ブルックナー曰く「ブラームス博士、その点では私たちは意見が一致するようですよ」 一同大爆笑。それでムードがほぐれ、あとは和やかな雰囲気のうちに食事が進んだとか。また、ブルックナーの交響曲第8番の初演(1892年12月)後、同曲への感想を直接求められたブラームスはきっぱりと「ブルックナーさん、あなたの交響曲は私にはわかりません」。ブルックナーも即座に「私もあなたの交響曲について同感です」と応戦。1896年10月、ブルックナーが死去した時、カール教会での葬儀に現れたブラームスは、堂内に入るよう促されましたが、「すぐに私の番だ」とつぶやき、その場を立ち去ったそうです。なるほど、両者の和解を願ってつくられたオブジェなのかもしれません。
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 インフォメーション兼売店でコンサートの入場券を購入し、隣りにある付属教会へと入りました。すぐ足下にブルックナーの墓碑、大オルガンの真下の地下室に彼の遺骸は安置されたのですね。合掌。白と金で豪華に装飾されたオルガンを撮影していると、そろそろコンサートの開始時間です。
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 プログラムを見ると、本日の曲目は、マックス・レーガーのトッカータ(ニ短調)、ブルックナーの"Perger"Praludium、Andreas EtlingerのFreie Improvisation、J・S・バッハのコラール「もろびとよ、神に感謝せよ」(BWV657)、そしてワグナー作曲、リスト編曲の「タンホイザー」。そしてオルガニストは…三曲目の作曲者、Andreas Etlingerでした。さあはじまりです、わくわく。
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 心を、体を、堂内を、宇宙を揺るがす重厚で荘厳な響きに包まれながら、ただただ音楽に没入するのみ。至福の三十分でした。中でも我ら二人が気に入ったのが、演奏者でもあるEtlinger氏の曲。インプロビゼーションというタイトルなので、即興演奏だったのでしょうか。その一陣の涼風のような軽やかで爽やかな曲想には聴き惚れました。インフォメーションに戻り、修道院のガイドツァーについて尋ねると、ドイツ語オンリーとのこと。われわれは参加せずに、修道院の外観だけを撮影。ショップでさきほど聴いたAndreas Etlingerの CDをさがすことにしました。鵜の目鷹の目、すべてのラックをほじくりかえしましたが演奏されていた曲のCDが見つかりません。詮方なく、同氏が違う曲を演奏したCDを購入、現在愛聴しています。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2014-10-25 08:52 | 海外 | Comments(0)
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