差別大国・日本2

 まずは『レイシズム・スタディーズ序説』(鵜飼哲 酒井直樹 テッサ・モーリス=スズキ 李孝徳 以文社)です。
 2006年、国連人権理事会に提出されたドゥドゥ・ディエン特別報告では、日本の人種主義が厳しく告発されている。「日本には人種差別と外国人嫌悪が存在し、それが三種類の被差別集団に影響を及ぼしているとの結論に達した。その被差別集団とは、部落の人びと、アイヌ民族および沖縄の人びとのようなナショナル・マイノリティ、朝鮮半島出身者・中国人を含む旧日本植民地出身者およびその子孫、ならびにその他のアジア諸国および世界各地からやってきた外国人・移住者である。このような差別は、第一に社会的・経済的性質を帯びて表れる。すべての調査は、マイノリティが教育、雇用、健康、居住等へのアクセスにおいて周辺化された状況で生活していることを示している。第二に、差別は政治的な性質を有している。ナショナル・マイノリティは国の機関で不可視の状態に置かれている。最後に、文化的・歴史的性質を有する顕著な差別があり、それは主にナショナル・マイノリティならびに旧日本植民地出身者とその子孫に影響を与えている。このことは主に、これらの集団の歴史に関する認識と伝達が乏しいこと、およびこれらの集団に対して存在する差別的なイメージが固定化していることに現れている。/公的機関がとってきた政策および措置については、特別報告書は一部のマイノリティのいくつかの権利を促進する法律がいくつも採択されたことを歓迎する。しかし同時に、人種差別を禁止し、かつ被害者に司法的救済を提供する国内法がないことに、懸念とともに留意するものである」。日本政府はこのドゥドゥ・ディエン報告に対して、「日本国憲法、民法、刑法で人種差別に対処しているから人種差別禁止法は必要ない。アイヌ民族や沖縄の人々が誇りを持って日本社会に貢献できるような社会を目指している」などという、きわめて植民地主義的で同化主義的な答弁をしている。(p.304~5)

日本の人種差別(レイシズム) 朝鮮学校女子児童に対する暴行事件(いわゆるチマ・チョゴリ事件)、朝鮮学校出身者の国立大学受験資格問題、在日台湾人・朝鮮人などの旧植民地出身者に対する社会保障の差別問題、日本軍性奴隷などの戦後補償問題などについて、日本が批准している国際条約に基づいて設置されている国際委員会(自由権委員会、社会人権委員会、子供の権利委員会、人種差別撤廃委員会、国連人権委員会、人権保護促進委員会、人権理事会など)が繰り返し是正勧告を出している。ただし日本政府はこうした勧告をほぼ無視してきた。(p.306)
 やれやれ… 次は『戦争の克服』(阿部浩巳・鵜飼哲・森巣博 集英社新書0347)です。
森巣 ここ数年で、国連の人種差別撤廃委員会から人種差別にかかわり九回も勧告を受けた先進国は、日本だけです。驚くべきことに、日本の新聞は、それを数行の記事で済ませちゃう。テレビにいたっては、まったく報道しない。だから多くの日本人は、日本にはレイシズムがないと思っている。とんでもない話ですよね。(p.114)

阿部 植民地支配を許さないというのと同時に、人種差別も許さないという段階になってきたわけですね。植民地主義と人種差別主義はセットですからね。ちなみに、人種差別撤廃条約の特徴は、この条約が守られているかどうかを監視する仕組みが、非常にしっかり整備されている点にあります。
その一つが国家報告制度というもので、締約国は条約の実施状況を人種差別撤廃委員会に報告しなければならないのです。それからもう一つ個人通報制度というものがあり、これが実に画期的なんです。その制度は、別の言い方をすると、国際的な人権救済申し立て制度なんですね。たとえば、国内で人種差別を受けて最高裁まで争って救済されなかった場合、なお訴える道を残しているのがこの制度なんです。
森巣 国の法律で認められなくても、国際的に訴えることができる。
阿部 そうです。この個人通報制度が併設されている条約は他にも四つあって、女性差別撤廃条約と拷問禁止条約、それから自由権規約。そして2003年になって効力を生じた移住労働者を保護する条約。これによって、移住してきた労働者とその家族を保護する国際条約上のシステムが確立したんですね。
森巣 人種差別、女性差別、拷問、自由権、移住労働者の人権。公式的にはどうであれ日本ではどれもほとんど守られていない。たいたい、社会的関心がないから不可視の領域に押し込められてしまっている。
阿部 この五つの条約のそれぞれに国際的な委員会が設けられているのですが、それらは信じがたいほどリベラルなんです。だから、日本の裁判で退けられた人権問題も、そこまでもっていけば異なる判断が出てくる可能性も大いにある。そういう可能性があると、今度は逆に、日本の裁判所も変るかもしれない。国内で退けた問題を国際的な場にもちだされたら恥をかくかもしれませんからね。
森巣 それは効果的です。
阿部 しかし、この制度を日本は受諾していないんです。しかも、現在この制度をまったく受け入れていない主要先進国は日本とアメリカだけ。
森巣 やはりそうでした。
阿部 自国の最高裁のほうが国際的な委員会より質が高いからというのが、日本とアメリカの本音なんです。ひどい話です。私は、この制度を受け入れれば、日本の社会は大きく変わるきっかけを得られると思うんです。少なくとも司法は変わりますね。(p.124~5)
 やれやれ…part2
by sabasaba13 | 2014-12-09 06:31 | 鶏肋 | Comments(0)
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