川越編(1):工業技術博物館(05.7)

 なにやら山ノ神が冷蔵庫の前でブツブツ言っています。「甘いもの食べよう」「太るぞ」「やっぱりやめよう」「えらい」 一人芝居か多重人格か腹話術か、よくわかりませんが。
 それはさておき実は私、川越に行ったことがありません。ま、なにかと人口に膾炙するようですし、沽券にもかかわるし、行ってみました。東武東上線沿線に面白そうな資料館・美術館や物件があるので、それとからめて一泊二日の小旅行にしてみましょう。ウキウキ さて本は何を持っていこう。旅行に持っていく本の選択って結構迷います。女性が服選びに迷うのもよく分かります。今回は、寺田寅彦が絶賛していた正岡子規の「仰臥漫録」にしました。北千住から東武伊勢崎線に乗り込んで、さっそく読み始めると次のような一節に出会いました。「新聞ナドニテ人ノ旅行記ヲ見ルト吾モチヨイト旅行シテ見ヨウト思フ気ニナル」(1901.9.16) 当時子規は脊椎カリエスに苦しみ、とても動けるような状態ではなかったのですね。子規のような俳句をつくるのは無理ですが、せめて徘徊ができる健康な肉体に感謝しながら彼の分まで動き回ろうと決意。なおこの一節は次のように続きます。「谷川ノ岩ニ激スルヤウナ涼シイ岸ニ小亭ガアツテソコデ浴衣一枚ニナツテ一杯ヤリタイト思フタ」 簡単なことなのですが、それすらも子規の病状は許さなかったのですね。
 東武動物公園で下車して、徒歩で約十五分。まずは日本工業大学工業技術博物館をめざしました。曇天にして炎暑、喪家の狗のようにフラフラと歩いていると、青いTシャツを着てプラカードを持った学生諸君が処々で道案内をしていました。今日はオープン・キャンパスのようです。でも住宅展示場の販売員のようで違和感を覚えました。経営が苦しいという大学側の事情も理解できますが、これでは「客引き」ですよ。ちなみに、彼らは大学から手当てはもらっているのかな。もし愛校心故の無償の行為だとしたら、ちょっと怖いですね。桑原桑原。
 ここは旋盤や織機などさまざまな工作機械を展示してある博物館です。解説が少なく素人には分かりづらいのが難点。せっかくいつでも動かせるように整備してあるのだから、実際に使用しているところを見たいな。一角に再現された町工場はいいですね。油の匂いやモーターやベルトのうなりが、「物をつくってるんだ!」という雰囲気をかもしだしています。以前紹介した小関智弘さんも、こんな町工場で働いていたんだろうなあ。墨田区にはこうした町工場がたくさんあったので、懐かしくなりました。外には2109号蒸気機関車が火入れをされて、もくもくと煙をはいていました。ただ構内に線路がないので、時々整備されるだけのようです。鉄路を駆け抜けたいであろうに、可哀そう。
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by sabasaba13 | 2005-07-24 21:42 | 関東 | Comments(0)
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