重森三玲の庭編(28):非核「神戸方式」の碑(14.3)

 最近読んだ『憲法と戦争」』(C・ダグラス・ラミス 晶文社)の中でも、この神戸方式について触れられていたので紹介します。
オーバビー 一九九八年十一月三日、私たちは高知県高知市に招かれ、橋本知事に会いました。日本国憲法と法律を考察した橋本知事は県政、つまり知事と県議会に県内全港湾の管理権があると考えるようになりました。橋本知事は高知県内全港湾を非核地帯として宣言しようとしています(注:県議会の多数を占める自民党の強い反対によって挫折してしまった)。
 これは一九七五年の神戸とは異なります。神戸市は神戸港の非核地帯宣言をしましたが、橋本知事とは違う法的論拠に基づいていました。
 日米間の軍事安全保障という絆にひびを入れる有効な行動の一つに、ニュージーランドの非核地帯宣言のような日本国土全体の非核地帯宣言があります。
 一九七五年と一九七六年に同僚をつれて神戸を訪れたデイヴィッド・ロンギは、非核地帯宣言された神戸港のことを聞き、その概念をニュージーランドに持ち帰りました。彼は一九八〇年代半ばにニュージーランド首相となり、ニュージーランド全体を非核地帯として宣言しました。そのため、核ミサイルを搭載した艦船または原子力船は申告なしには入港できなくなり、また申告すれば核兵器を搭載しているということなので入港はできなくなりました。
 橋本知事の努力は微々たるものですが、どんなに小さくても始まりです。日本人に何かできることはないだろうかと聞かれれば、橋本知事の非核地帯宣言運動を進んで奨励し支持すること、と答えます。もし橋本知事が成功すれば中央政府の政策にとっては大きな痛手となるはずです。実際に港を非核地帯とする立場が取れるわけですから。
 日本の非核三原則は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」でしたよね…。
ラミス そうです。
オーバビー 核の持ち込みに、日本政府が目をつぶっていることは誰でも知っています。米海軍の艦船はひっきりなしに日本に入港しているわけですから。それらの艦船は核兵器を積んでいるに違いありません。
ラミス 非核地帯宣言は大きな一歩です。指摘されたように日本には非核三原則がすでに存在します。日本政府はだから核兵器が日本に入って来ることはないと主張しますが、同時に、米国の核の傘の下にいるから安全である、とも保証します。核の傘を形づくる核兵器がどこにあるのかということになるとはっきりしません。
オーバビー (笑)確かに。
ラミス 政府によればそれらの核兵器はすべてグアムあたりにあるということになりますかね。日本が米国の核の傘の下にいることが日本の政策の基幹になっているのです。ですから非核国となるためには核兵器を積んだ艦船の入港を禁じるのみならず、いわゆるこの傘による保護をも辞退しなければなりません。私たちの代わりに核爆弾を落としてほしくほない、と。これは政策の大幅な変更です。
 橋本知事は高知県内の港に入ってくる船舶をすべて査察すると言っているのでしょう?
オーバビー そのつもりだと思います。
ラミス ご存知のとおり、艦船に核兵器が搭載されているのかいないのか明言しないのが米国の方針です。
オーバビー そのとおりです。ニュージーランドのロンギにとってそれは満足のいくものではなかった。
ラミス そうです。橋本知事は「自分の目で確かめなければ信じられません」と言うのでしょうか。これは今、米国がイラクに向かって主張していることとまったく同じです。
オーバビー そのとおり! 確かにそのとおりです。
ラミス 自分がイラクに押しっけている方針を米国は受け入れないわけにはいかないでしょう。
オーバビー 日本も同じです。日本は米国がイラクに対して行っていることに同意しているのですから。
ラミス ええ。「こちらには査察団がありますので艦船の隅から隅まで、核兵器があると考えられる場所はすべて査察します。何も見つからなければ入港を許可します」。橋本知事がこのように実行してくれると良いのですが。
オーバビー 理想かもしれない。けれども何らかの方法でこのような考えが普及し、高知県で実現すれば他県も同様の行動が取れます。そうなれば横浜港、東京港も非核地帯となるでしょう。
ラミス そして沖縄も。
オーバビー そう、沖縄も。あまりにも楽天的で非現実的かもしれませんが、希望の種です。(p.144~8)

by sabasaba13 | 2015-08-21 07:45 | 近畿 | Comments(0)
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