重森三玲の庭編(39):旧山邑家住宅(14.3)

 ふたたび階段をのぼって三階へ行くと、足下までのびた大きなガラス窓が続く長い廊下になっています。ホームページの解説によると、窓は当時のアメリカではめずらしい外開きになっており、一般的だった上げ下げ窓をライトはあえて採用しませんでした。『自然の家』の中で、彼はこう述べています。"私は、外向きに開く窓のために闘った。開き窓(ケースメント)が家と外部空間を結び付け、外へと向かい自由な開口をつくり出すからだ。いわば開き窓というものは、単純なだけでなく、使う上でも、その効果においても、もっと人間的なもの―すなわち自然なものだったのだ。(p.55)" またこの窓にも葉をモチーフにした飾り銅版がしつらえてあり、運が良いことに、太陽の光が銅板を通して床に光と影を落としていました。まるで葉のすき間から射し込む木漏れ日のような美しさ。前回訪れたときは曇りで、この光と影による演出を拝めなかっただけに嬉しさも一入です。なおこの銅版は、色も自然のグリーンに近づけるためわざわざ緑青を発生させたそうです。
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 この廊下に沿って和室が並びますが、これは施主の要望によって取り入れられたそうです。ライトはもともと和室をつくる気はなかったようで、よってここは遠藤新や南信が中心となって設計したのかもしれません。そして応接室とならぶもう一つの白眉が、四階の食堂です。まず眼についたのが宝形造りのような、四角錐をした屋根裏。そこに幾何学的な意匠に細長く黒い木材が取り付けられています。壁面上部に並んだ、採光・通気のために細長い三角形の小窓がチャーミングですね。ただ大きな窓がないために、さきほどの応接室にくらべるとやや閉ざされた空間という印象を受けました。プライベートな場ということを意識したのでしょうか。
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 葉をモチーフにした飾り銅版がしつらえてあるドアを抜けると、広々としたバルコニーに出られます。素晴らしい眺望を楽しみながら、食後のひと時を過ごしたり、ガーデン・パーティーを開いたりできるよう、設計してあるのですね。ふりかえって食堂のある四階部分を見ると、この建物がさまざまな装飾で飾られているのがよくわかります。軒先に配された大谷石や庇に施された飾り石、そしてモチーフでもありアクセントでもある葉の飾り銅版。モダンな形の煙突さえも装飾に見えてきます。突き当りにはアーチつきの階段があり、ここをくぐって降りるともう一つ小さなバルコニーがあります。このアーチは狭くて天井が低くなっていますが、これも応接室の入口などと同じように、狭い空間を抜けた先に開ける広い空間を強調するための演出ですね。
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 本日の五枚です。
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by sabasaba13 | 2015-09-04 06:31 | 近畿 | Comments(0)
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