鏝絵(こてえ)。土蔵や戸袋、壁の漆喰の表面に鏝を使って薄肉状に盛り上げた浮き彫りを施し、彩色したものです。江戸後期に伊豆の左官、入江長八が創始したといわれ、各地に広まり、特にここ安心院(あじむ)に多く残されています。運転手さんも未見の地らしく、とりあえず観光案内所によって情報を仕入れることにしました。するとたまたま鏝絵に詳しい地元の研究家のSさんがいて、わざわざ車で先導し案内してくれるとのこと。そりゃありがたい、さっそくご好意に甘えることにしました。七福神、竜虎、鶴亀、幸福・辟邪を願う人々の素朴な思いが託されたヘタウマな鏝絵がニコニコと出迎えてくれます。爽やかな秋空のもと、長閑な農村・街並みの光景によくマッチしていました。街でも観光資源として売り出そうとガイドマップをつくっているのですが、道標も未整備なのでわかりづらい。案内してもらい大変助かりました。彼曰く、最大の問題は保存。なんせ昼夜を問わず風雨に晒されているので、剥離や崩壊が甚だしい。おまけにもろい漆喰なので保存する方法も難しいとのことです。家の取り壊しが決まると、家主と折衝して鏝絵の部分だけを譲ってもらいはがして自宅に保存しているそうです。そのコレクションを拝見しましたが、その熱意には頭が下がります。
帰り際に「チューハイにすると美味しいよ」とカボスを八個もいただいてしまいました。重い… 捨ててしまえと悪魔が囁きましたが、それはできぬ。宅急便で自宅に送りました。後日、さっそくチューハイにしたところ[→カボチュー]、これが美味! これほど美味いチューハイは飲んだことがありません。どうもありがとうございました、Sさん。
そして別府着。念願の関アジ・関サバのお造りを満喫。
本日の一枚は、私の一番好きな鏝絵です。