国芳イズム

国芳イズム_c0051620_6354453.jpg 練馬の桜を愛でながら、練馬区立美術館に寄り、「国芳イズム―歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家 悳俊彦コレクション」を見てきました。以前に府中市美術館で国芳展を見たことはあるのですが、かれの浮世絵は何度でも見たいものです。また山ノ神は彼の絵は未見とのことなので、ぜひ見せてあげたく思います。
 まずは同美術館のHPから、展覧会の趣旨を転記します。
 歌川国芳(寛政9~文久元・1797~1861)は今や言わずと知れた幕末浮世絵の大スターです。ヒーローやアウトローはカッコよく、戯画は大ウケ、動物は愛らしく、江戸の市中の話題は持ち前の反骨精神と洒落っ気でものの見事に描いてみせます。
 そうした国芳が切り拓いた幕末浮世絵の奇抜さ斬新さは数多くの弟子達はもとより、幕末・明治に活躍した浮世絵師、風俗画を描く市井の絵師たちに脈々と受け継がれていきました。
 この展覧会は武蔵野の自然を描く洋画家、悳俊彦(いさおとしひこ)(1935生)氏の数百点にも及ぶ国芳コレクションの中から、彼の代表作、そして世に1点、数点しか確認されていない稀少作を選りすぐり、また、河鍋暁斎、月岡芳年を含む国芳一門の作品を余すところなく紹介します。加えて、"国芳イズム"を継承する尾形月耕、山本昇雲、そして近年大注目の小林永濯らの初公開の作品を数多く含む約230点で、幕末・明治期の浮世絵・風俗画の粋を紹介するものです。
 悳氏は幕末・明治期の浮世絵の革新性、楽しさに早くから着目し、長年に亘りコレクションしてきた蒐集家・研究者として国内はもちろん、海外でも高い評価を受けています。
 そうした一面と共に、本業である洋画家としては風土会に所属し、四季折々に木々や空や水がその彩りを変化させる武蔵野の風景を長年に亘って描いてきました。未だ武蔵野の面影を残す練馬ともなじみの深い悳氏の作品も併せて展示し、コレクターの素顔を紹介します。
 自由奔放・エネルギッシュで、遊び心に満ち、しかも精緻な彼の浮世絵を堪能できました。はじめて見るという山ノ神もおおはしゃぎ、誘ってよかった。府中市美術館では展示されていなかった傑作「相馬の古内裏」と「源頼光公館土蜘作妖怪図」を見られたのも眼福です。ポスターにもなっている、歯をくいしばって滝を浴びる文覚上人の力強さ・派手さ・くどさにはもう開いた口がふさがりません。なお国芳が愛した、そしてわれわれも大好きな、猫をテーマとしたコーナーがあったのも嬉しい企画です。浄瑠璃で口上を述べる猫の裃には小判の紋様、そして家紋は肉球、二人でにやっと笑ってしまいました。
 武者絵を「ヤンキー文化」と評したり、いちゃつく猫を「ラブラブ」と表現したりするなど、ちょっとくだけた、親しみやすい解説にも好感がもてました。学芸員の方の見識に敬意を表します。多くの人に美術館に足を運んでほしいという思いを感じますね。
 またあまり紹介されない、尾形月耕、山本昇雲、小林永濯といった絵師の作品を見られたのも僥倖でした。コレクターである悳氏の、武蔵野の風景を描いた静謐な絵にも心惹かれます。

 ミュージアム・ショップで絵葉書・クリアファイル・カタログを購入、国芳ワールドを楽しむ縁としましょう。穏やかな春の一日、桜と国芳に元気をもらいました。
by sabasaba13 | 2016-04-04 06:36 | 美術 | Comments(0)
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