江戸東京たてもの園編(18):(14.9)

 先日読み終えた『名作うしろ読み』(斎藤美奈子 中公文庫)では、"猫文学史に燦然と輝く一冊"として『ノラや』(中公文庫)が紹介されていました。猫文学…T.S.エリオットの『キャッツ』、夏目漱石の『吾輩は猫である』の他になにがありますかね。
 ノラや、お前は三月二十七日の昼間、木賊の繁みを抜けてどこかへ行つてしまつたのだ。それから後は風の音がしても雨垂れが落ちてもお前が帰つたかと思ひ、今日は帰るか、今帰るかと待つたが、ノラやノラや、お前はもう帰つて来ないのか。
 そして内田百閒と聞くと思い出すのが谷中安規です。1897(明治30)年、奈良長谷寺の門前町に生まれ、25歳で版画を志し、以後放浪と貧窮のなかで生米とニンニクとカボチャを食べながら独自の版画をつくりつづけます。1946(昭和21)年、栄養失調によって餓死。彼の言葉、「ぼくに就職をすすめることは、間接殺人です」が心に残ります。内田百閒が彼を敬愛し、「風船画伯」と名づけ、装丁と挿絵を彼に依頼してつくった絵本が『王様の背中』。これはぜひ読んで/眺めてみたいものです。この二人が鍵屋で一献傾けたこともあるのかな、なんて想像すると胸がざわめきます。もちろん百閒のおごりで。

 というわけで江戸東京たてもの園編、一巻の終わり。ひろびろ伸び伸びとした雰囲気のなか、名建築を探訪できる素敵な野外博物館です。桜の時期にはとくにお薦めですね。これからもどしどし収蔵建築を増やしていってほしいと期待します。東洋キネマと同潤会アパートがないのが一抹の心残りですが。
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by sabasaba13 | 2016-07-31 07:27 | 東京 | Comments(0)
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