ノーベル賞雑感

 ノーベル医学生理学賞を受賞された大隅良典さん、おめでとうございます。
 浅学ゆえ、その業績を十全に理解はできませんが、人類の福祉向上に大きく貢献するものだと思います。ただ二つほど気になる点がありました。まずはメディアの報道姿勢。管見の限りでは、日本人がノーベル賞を受賞した→日本人は優秀だ→あなたも私の優秀な日本人の一人だ→あー気持ちいい、というニュアンスの報道でしたね。街頭インタビューでは、ある方が「日本人は凄いですね」と答えておられました。やれやれ、オリンピック・パラリンピックのメダル数と同じく、素晴らしい結果を残した個人に便乗して快感を味わい、日頃の憂さを晴らすというメンタリティから脱却できないものですかねえ。その"憂さ"の原因をつくって利権を貪っている政官財諸氏からすれば、なんて扱いやすい人々なのでしょう。「野茂がもし世界のNOMOになろうとも君や私の手柄ではない」という、枡野浩一氏の歌を進呈いたします。
 ついでに言うと、人間を優等なグループと劣等なグループに分け、自分は前者に属すると勝手に思い込んで優越感に浸りたいのかもしれません。ノーベル賞を受賞した優秀な大隅さんと同じ日本人だぞってね。となると、コインの両面で、劣等な人びとを見いだし、いなければでっちあげれば申し分ありませんね。ヘイトスピーチもそう考えれば、理解できそうな気がします。やれやれ、人類が築き上げてきた人権という思想が、この国にはまったく根付いていないようです。

 もうひとつ、気になったこと。インタビューに対して大隅氏は、「基礎研究が大切」と幾度となくくりかえされていました。これは、大学における基礎研究の予算を、政府および文部科学省が大幅に削減していることへの遠まわしな批判ではないかと受け取りました。推測ですが、氏は、ほんとうはこう言いたかったのではないかな。「商品と武器の開発研究によりも、基礎研究に予算を振り向けるべきである。年間5兆円を超える軍事費を大幅に削減して、それを科学の基礎研究に使えば人類の福祉向上に大きく貢献できるはずだ」とね。でも、もしこうした発言をしたら世論はどう反応するでしょうか。これも推測ですが、6割が無視、3割が感情的・攻撃的なバッシング、そして1割が賛同。まさかこの国の知的レベルがそこまで低劣なものになっているとは、思いたくもありませんが。ま、杞憂だといいのですけれどね。
by sabasaba13 | 2016-10-06 06:23 | 鶏肋 | Comments(0)
<< マーボー焼きそば 京都錦秋編(25):智積院・養... >>